ぼくらの

鬼頭莫宏

3.87

15908

発刊:2004.06.30 〜

完結・全11巻

『ぼくらの(1)』巻の書影
『ぼくらの(2)』巻の書影
『ぼくらの(3)』巻の書影
『ぼくらの(4)』巻の書影
『ぼくらの(5)』巻の書影
『ぼくらの(6)』巻の書影
『ぼくらの(7)』巻の書影
『ぼくらの(8)』巻の書影
『ぼくらの(9)』巻の書影
『ぼくらの(10)』巻の書影
『ぼくらの(11)』巻の書影
ヒョーロッパさん、他2人が読んでいます

この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
3.87

418件の評価

4.6

11巻まで読みました

近未来もののロボットマンガです。
夏休みに自然学校に参加した15人の少年少女たちが、ひょんなことから地球を守るために巨大ロボットを操ることになる話。

自然学校に参加した15人の少年少女は、海沿いの洞窟で「ココペリ」と名乗る男に出会います。
その男にゲームを持ちかけられた少年少女たちは、興味本位でココペリと契約し、巨大ロボットに乗り込む。
チュートリアルとしてココペリが操縦するロボットが、敵の黒いロボットを撃破すると、ココペリは姿を消し、「コエムシ」と名乗るクチの悪いマスコットが待っていた。
少年少女の内の一人、「和久 隆(ワク)」は、ココペリの戦闘の後で声を聞き、次のパイロットが自分だと知る。
そして、再び現れた黒いロボットを倒すため、ワクはロボットに搭乗する、という展開です。

あらすじだけ読むと、勇者シリーズとかエルドランシリーズとか、子供たちがロボットを操縦して悪いロボットをやっつける系の作品っぽいです。
ですが、子供向けっぽいのは導入時の設定のみで、その後の展開はエドワード・ゴーリーの絵本を彷彿させるブラックっぷり。
間違っても子供に読ませるマンガではないと思います。

15人の少年少女は、そのロボット"ジアース"がマガジンだとすると、そこにセットされた弾丸のようなもので、一度操縦桿を握ると勝とうが負けようが命を失ってしまうことが決定づけられています。
地球を守る戦いなので、負けると地球が滅亡し、勝っても操縦者は死んでしまうという鬼畜展開。
思わず泣き叫び、絶望し、自暴自棄に走ると思いきや、そういう行動に出たのは一人だけで、後の子どもたちは異様なほど冷静です。
その子どもたちにも裏事情があり、キャラによりますが結構きついものを背負っています。
一人ずつランダムに選出される子供の、それぞれの事情、そんな中やってくる敵ロボットとのバトルにより、想いを託し死んでゆくドラマが展開され、毎話毎話なんともいえない誤読感が読み手を苛みます。
ジアースの戦う敵の正体も、なんというか非常に悲劇的で、全体的に暗い作品です。

ただ、暗い気持ちにはなるものの引き込まれる作品で、凄い単位で人が死にますが、グロ描写は無く、心に訴えてきます。
アニメの主題歌『アンインストール』はニコニコ動画で一時期大人気だったため、そこから本作の知名度も高く、意外とみんな知ってる作品だったりします。
万人受けはしませんが、名作だと思います。

4.9

11巻まで読みました

・はじめに

私事ですが、今作(とスクイズ)は自分が漫画やアニメやノベルゲーにハマるキッカケとなった作品です。なので、正直思い出補正は多少入っていますが、人生を狂わせるだけの説得力と影響力がこの作品には確実にあるのだと言い切れます。

また鬱作品の良さと言うのは、非情や理不尽さそのものという浅い部分にはありません。それこそ人間ドラマ。汚い部分も綺麗な部分も、強い部分も弱い部分も、全てが攪拌されてごちゃごちゃで何だかよく分からない正体不明が浮き出てくるのが良いのです。
鬱作品は、暗いだけでは成立しないのです。その中で何を描くのか、結局は他の作品と大差ありません。内側の露出部の多少が違いでしょうか。
それも、私個人の取り方ではありますが。

・感想

生きるということ。
一言で表すなら、この作品はそういうことなのでしょう。

ロボットの謎等、SFの設定は全くメインではありません。
作中に出てくる専門知識(軍事、物理設定等)は最悪読み飛ばしてもなんら問題はありません。作者の教養には驚かされましたが。

今作はあくまでも、死生観の物語。言い換えるのならセカイ系(ちょっと違うかも?)です。
死を宣告されたからこそ生きることから逃げられなくなった者達の物語。

主人公の子供達だけでなく、周りの大人達も蚊帳の外ではありません。皆が真摯に向き合って、心情を吐露しています。

答えがないからこそ難しいし、だから一人一人に重みがあって、何と表現すべきなのか分からない感情の奔流に飲み込まれました。

言うまでもないことですが、主人公の視点からの悪人は、悪人視点からすると己です。
悪と正義に垣根はありません。あるとすればそれは視点の違いだけです。
その人物にも脳があり意思があるのだから。
悪を悪として描くのは簡単ですし、物語はそうでなければ盛り上がりません。しかし今作は、そこにも切り込んで描かれていました。
悪を分かりやすく悪だと、皆が望む仮想敵に仕立て上げるのではなく、本当に人間として描写されていました。

狭量な視点で浅瀬で遊んでしまいがちなテーマをここまでしっかりと描き上げるなんて、考え方を分岐させられる人にしか作れないでしょう。
驚嘆の一言です。

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