――今日から再び「お兄ちゃん」です。妹がいることは知っていた、実感はなくただ知っていただけ。2年付きあった彼女と別れ、何となく気分が乗らない、そんな日に妹に出会った。彼女と別れたモヤモヤは、妹に見せた失態で、吹き飛んだ。みんなが俺のことを「お兄ちゃん」という……。妹って何だ。吉田基已の傑作ラブストーリー、新装版にて刊行開始!
フラれたばっかの男が、自分もフラれたばっかだという女子高生とたまたま会って話すうち、うっかり涙を見せてしまう。 ただ、その女子高生は実は全然会ったことのない妹だったという話。 脚本家の倉田英之が前にどこかで「『恋風』は家の全ての部屋に一揃いずつ置いてある」みたいなことを言っていた。 私もわりと似たようなところがあり、実家にワンセット、今住んでいる部屋に新装版でワンセット、更に電子版でワンセット所持している。 それほどこの作品が好きだ。 いわゆる「禁断の恋」的な話ではあるのだが、爽やかできらめいている、だから罪深い。 淡い色彩、あるいはセピアを感じさせるような、優しくノスタルジックな普遍。 いい意味で文学的なまといというか、飛躍のない描写の積み重ねでドラマを描き出す手法も作品の純粋さをひきたてる。 登場人物たちの、いい意味で華やかさのない、素朴な顔立ちも好きだ。
by 鈴木 (34)