いましろたかし最初期の連載作品である「ハーツ&マインズ」と「ザ☆ライトスタッフ」を一挙再録。さらに、単行本未収録だった短編4本と、松本大洋、糸井重里、新井英樹、松尾スズキ、呉智英といった多数の著名人からの祝辞を追加収録した、題名どおりの豪華な作品集。 <p> 「ハーツ&マインズ」では、若者、というには少しだけ年をとってしまった登場人物たちの、なさけなくてかっこ悪い日常がギャグタッチで描かれる。安アパートで夜ごと「もてたい」とうめく日払いバイトの男。はっきりと人にものが言えず小心者で、いつも貧乏くじを引かされるまじめな青年。あまり深くは考えないが行動力だけはある、焦燥感むき出しの自称硬派…。 <p> いましろたかしの描くこれらの男たちは皆、「おかしいなら笑えよちくしょう、こういう風にしか俺は生きられないんだよ!」という魂の叫びを発している。だから、他人とのかかわりあいや世間との折りあいについて、少しでもつまづいたり悩んだことのある人なら、彼らの行き様に胸を打たれるところがあるに違いない。あまりにも自分の本音に素直で、嘘をつけない彼らは、社会的にははみ出し者だが、実はとても男らしいとすらいえるのだ。せつなくも熱い男気が、おかしくも胸にしみる。 <p> 「ザ☆ライトスタッフ」は「ハーツ&マインズ」と登場人物が一部重複しているので、ある意味続編といえるが、前作のヒリヒリした緊張感が緩和されている分、枯れた穏やかさがたち込め、こちらもまた実に味わい深い。追加収録の短編では、どうでもいいように見えるけどやっぱり深い人生の隙間が垣間見える。この一連の作品群の中には流行も幻想もカリスマもいない。ここにはただ、男の真実のブルースがあるのみだ。(横山雅啓)
金星で7年の任務を終えて、故郷地球へ帰還する隊員たち。しかし、新型爆弾の放射能で汚染された地で、果たして生きる道は残されているのか……!? 絶望を背に人間の真価が問われる不朽の名作「来るべき人類」。黒い放射線をキーワードに、多発する死亡事件の犯人を追う「くろい宇宙線」など、SFという言葉もジャンルもなかった時代に、手塚治虫が人類に暗示するかのように描いた衝撃作8編を収録。 <手塚治虫漫画全集収録巻数>手塚治虫漫画全集MT275~276『ライオンブックス』第6~7巻〈おもしろブック版〉収録 <初出掲載>「来るべき人類」1956年8月号 おもしろブック付録(以下同)/「緑の猫」1956年12月号/「白骨船長」1957年6月号/「宇宙空港」1956年10月号~11月号/「恐怖山脈」1957年1月号/「くろい宇宙線」1956年9月号/「狂った国境」1957年3月号/「複眼魔人」1957年4月号~5月号