1333年、鎌倉――。幕府の後継として生きるはずだった少年・北条時行は突然の謀反で故郷も家族も全て失う。しかし時行は、生き延びることに関しては誰よりも秀でていた。信濃国の神官・諏訪頼重に誘われ、少年は逃げて英雄になる道を歩み始めた!
18世紀フランス革命前夜。平民の出ながら、ベルサイユ宮殿で貴族以上の権勢を誇る“仕立て屋”がいた。彼女の名はローズ・ベルタン。悲劇の王妃マリー・アントワネットの寵愛を受け、革命の波にのまれていった、ファッションデザイナーの祖と称される人物の物語。
5巻既読。 「仕事しよ」のセリフかっこいい。 18世紀フランス、ひとりの女性が時のマリー・アントワネット専属のファッションデザイナーを目指す歴史漫画。 基本的に登場人物も物語の大筋も史実に沿っています。 内容はわりとゴリゴリの西洋歴史漫画です。 当時のあらゆる考証が細かく、街並みや衣服等の描き込みが尋常じゃないです。 各話の後に作者さんと編集さんの雑談形式で当時の文化や風俗、歴史などが紹介されますが、すっげぇ勉強になります。作者さんは相当な歴オタだそうですが、それも頷ける。 蛇足ですが、史実ベースの西洋歴史漫画といえば、やはり惣領冬美先生の『チェーザレ』を想起しますが、あちらはイタリアが舞台。 フランスといえば『イノサン』ですかね。本作と同時期ですし、『イノサン』にも少しローズベルタンが登場します。 次代のフランスが舞台の歴史漫画といえば本作、になり得るんじゃないでしょうか。 完結まで追いたいと思います。 ちなみに、「マリー・アントワネット」については坂本眞一先生の『イノサン』、惣領冬美先生の『マリー・アントワネット』でザックリとは知っていましたが、アントワネットの結婚のために例の人工橋を作ってオーストリアとフランスの国境を跨ぐシーン、色々な描き方があって少し感動しました。 同じシーンでも描き手が違うと印象もだいぶ違うんですね。主題が違うので当たり前なんですけど、それぞれ見比べるのが楽しかったです。
by せーふぁ (1046)少女は運命を乗り越え、神々と対峙する――。古代倭国ファンタジー、開幕! 遥か昔の倭の国の、神代と人世のその間。神々が人間と共存していた時代。 村を司る神・切風孫命神への生贄に選ばれた少女・妙(みよ)は、避けられぬ死に怯えていた。 しかし、神と相対し対話する異能を持つ道士・小角(おづの)との出会いが、彼女を窮地から救い出す……! みなしごの少女と、壮麗の道士、そして鬼の少年。時代や次元さえも超越した、神々を巡る旅が始まる! 俊英・鶴淵けんじが、古代神話にファンタジーやSFの視点を加えて描き出す、全く新しい“古代日本”像。
ヒトの形をした動物に関する歴史の話。水たまりの中の自分と顔を交換した人の話。ゴミ川の中のフラスコの中の人魚の話。現代の路上にいる神の話。ウェブで話題のSF作品群に描き下ろしを加え、待望の単行本化。●収録作品『偽史山人伝』『日曜は水の町に』『人魚川の点景』『人間のように立つ』『姉の顔の猫』『現代路上神話』『存在集』(描き下ろし)●詩野うら作品既刊『有害無罪玩具』(好評発売中)
『有害無罪玩具』に続く、詩野うら2作目の読切集。 表題作「偽史山人伝」ほか6作、うち描き下ろし1作。 奇妙奇天烈で心がザワつくような作風は前作通り。 前作よりも"全ページ全行に挿絵が入った奇想小説"感(伝われ)が強くて、やはり腰を据えてじっくり読むことをおすすめ。 『有害無罪玩具』よりもフォークロアチックなSFで、表題作「偽史山人伝」からそれに続く「あとがき」、さらに書き下ろし「存在集」と後半が凄かった。 前半は前半で「人間のように立つ」のちょっとウェットな雰囲気や「現代路上神話」の頭がおかしくなってきそうな(貶してない)ザ・"奇想"感も病みつきになります。 そしてラストの「巻末あとがき」。ここまで見逃さないで読んでください。
by せーふぁ (1046)16世紀、数万人が迫害を受けて死んだ“魔女狩り”。その狂気の時代に魔女と断罪された人々に寄り添い、医療の力で救おうとしたひとりの医師がいた──。精神医学の先駆者でもある実在した医師、ヨーハン・ヴァイヤーを描いた歴史ドラマがついに書籍化!
中世ヨーロッパ。現代医学とは対極の、魔女狩りが常識として行われていた時代。 "常識"ほど、不安定で移ろいやすいものはないでしょう。それが本作を読むと痛いほどわかります。 現代医学の礎の裏には、戦争がありました。失敗無くして成功はありません。 魔女狩りも、精神医学が発達していなかった中世の頃、更年期を迎える中年女性を中心に行われました。 自失状態や錯乱状態にあった彼女たちを「魔女」と呼び、その多くは火あぶりにかけられました。 人は、わからないものには無理やりでも理由をつけて安心したい性分なのでしょう。 そんないわば魔女の烙印をおされた人々を救った実在の医師、ヨーハン・ヴァイヤーの半生を描いた作品。 淡々としたテンションですが、それがかえって小気味良かったです。
by せーふぁ (1046)大正十四年(一九二五年)、桜舞う春に作家を志す23歳の文学青年・小林秀雄は上京してきたばかりのまだ18歳の詩人・中原中也と運命的に出会う。自意識の殻に閉じこもり、創作の迷路に入っていた秀雄に衝撃を与えて、彼の生きざまを根っこから変えていく中也… そして中也には同棲する一人の女・長谷川泰子がいた―― 事実を基にフィクションを交えて描き出す、文学に人生すべてをかける中也と秀雄… 『彼女とカメラと彼女の季節』月子が描き出す! まだ無名だった二人の切なく物狂おしい物語が今、ここに始まる…!!
早熟の天才詩人、中原中也とのちの近代文芸評論(作品を批評するだけでなく、文学史そのものの研究や作家と作品の研究も含み、守備範囲はとても広い)の確立者とされる小林秀雄の人間ドラマ。 恥ずかしながら詩を読んで味わえるような感性を持ち合わせていないので、物語とともに中原中也の詩が綴られても、どう読めばいいのかわからなかったです。 これはすごいんだろうなとはもちろん流れでわかりましたがそれ止まり。。 むしろ、中原中也と小林秀雄の天才どうしの出会いやさまざまな葛藤といった人間ドラマの方に惹かれました。 この文学者特有の苦悩や葛藤は、今の私たちにはあまり理解し難いものかもしれません。 例えば、芥川龍之介や太宰治といった文豪がこの苦悩や葛藤の末に自殺を遂げたのは、現代の私たちが考える「自殺」と彼らの考える「自殺」には大きな考え方の隔たりがあったのが要因とされているそうです。 実際に自殺に至ることはなかった中原中也と小林秀雄。もっとその前の、当時の文学者としての苦悩や葛藤を、月子先生の柔らかい作画で読むことができ、楽しめる。 その点で凄く入り込めました。ウィキペディアで彼らのその後を読むと切なくなります。 作品としては打ち切りエンドだそうですが、それでも面白い。味わい深い作品ですね。
by せーふぁ (1046)