うにたべたい さんのレビュー

472

4.5

26巻まで読みました

突如宇宙から光が輝き、その日、地球上の全人類は一斉に石化する。
高校生・大木大樹は、同級生・小川杠に告白しようとしていたのだが、石化して薄れゆく意識の中、杠への思いだけを胸に、気を保ち続けていた。
そして、世界はそのまま、3700年ほど経過した。
大地は変動し、地軸がずれるほどの長い年月の後、突如、大樹を覆っていた石が剥がれ始め、見事復活を果たす。
だが、その世界は、文明が滅んだSTONE WORLDだった。
先に石化から目覚めていた幼なじみで、科学大好き高校生の石神千空と邂逅した大樹は、千空と共に、科学で世界を取り戻す。

Boichi氏の初の少年誌連載作品です。
Boichiさんは本作の前に青年誌で『サンケンロック』というアウトローマンガを描いていましたが、全く毛色の異なる作品となっています。
バトル描写はありますが、本作の主題となっているのは、基本的に科学であり、荒涼とした世界で採取した石や水、植物から、現在、我々の生活を便利にしているモノを作り出し、世界の謎を解き明かす展開となります。

少年誌の科学マンガとか、学研まんがレベルの小学生向けかと思いきや、内容はかなり専門的です。
序盤は紐、火薬、滑車、台車といったものを作成しますが、後に製鉄を行い、発電所を作り、ガラスを精製します。
終いには、テレビや自動車、インターネットなんかも自作するので、現実性はともかくとして、ものの仕組みを興味深く学ぶことができます。
また、作中では、猫じゃらしからラーメンを作ったり、重曹やクエン酸に香辛料を組み合わせてコーラを作ったりします。
特に猫じゃらしラーメンは、実際にマネて作れるようで、実際にできそうと思わせられるあたりが楽しい作品でした。
ただ、科学知識が鬼のように詰まった千空、体力が人外レベルで無尽蔵な大樹を始め、細かい作業を正確かつ超スピードでこなせる杠、手先が凄まじく器用な職人カセキ、限られた食材からどんな料理も拵えるフランソワなど、登場人物のスペックはものすごく高いです。
一から作る場合、かなりの長期間がかかるはずの資材、素材の生成、調達も、一度作ったものに関しては"既にあるもの"となっており、そういった意味で、都合の良さを感じました。
そのあたりちゃんと描いてしまうとかなり地味なマンガになるので、結果、テンポよくて読みやすいと思います。

回が進む度、特徴的な登場人物がどんどん増えますが、キャラを使い捨てせずに過去キャラも後半ちょくちょく登場するもの良かったです。
世界人類の石化発生の原因などの謎も回収した上で、その先にとんでもないガジェットを開発しているところで終幕しており、科学の発展に終わりがないことを思わせる、作中の言葉で言うと、「唆る」終わり方でした。

Dr.STONE

レビュー(986)件

完結・全26巻

4.0

1巻まで読みました

『午前3時の無法地帯』、『午前3時の危険地帯』のスピンオフ短編集。
収録作は5編で、各話主人公が異なる形式です。

<ガゼルのたてがみ>
主人公はP-DESIGNの営業・輪島です。
本作だけ、執筆時期が『~無法地帯』終了後、『~危険地帯』開始前で、そのため『~無法地帯』内のできごとがネタになっています。
よく当たり散らしているが、実は気が弱い輪島は、ある朝、既に退職した元女性社員・由香のにらみつけるような目を夢に見て目覚めます。
その後、街で偶然、由香に出会い、気にし始めるという展開です。
恋までは発展しないものの組み合わせが意外でおもしろかったです。

<empty heart>
宮下の元カノ・アキホと、P-DESIGNのデザイナー・田辺のスピンオフ。
こちらも組み合わせが意外に感じました。
というか、田辺は、そういうキャラがいたことは覚えていますが、名前があったのかレベルの認識しかなかったです。
地味なキャラに映りましたが、本作でようやくスポットライトがあたったように思います。
アキホも、本編では悲惨な役柄でしたが、本作でなんとなく救われた感じがしました。

<大人の事情>
真野さんと堂本のスピンオフ。
『~危険地帯』内であったできごとの裏話的な内容です。
短編だし、展開は非常に王道、だけどこんな"仕方ない"から壊れるもんだよね、という話です。
最終的にはハッピーエンドとなりますが、ご都合主義的なところが強かった気もします。
ご都合主義なハッピーエンドが好物な私としては、本書収録作内で一番好きな作品です。

<ウェディングマーチ>
怪人パンツ男・瀧と、『~無法地帯』で職場連れ込みがバレた瀧の友人のスピンオフ。
急に結婚の話を持ちかけられ、人生に悩み始めた瀧が、ある日、乗ったタクシーの中で不思議な経験をする話です。
オチはありますが、珍しく神秘的で、世にも奇妙な物語系の展開となっています。
ラストはシリアスですが、ギャグテイストも強い作品で、異色感があります。

<きのうと今日とそれから>
ももこと多賀谷、たまこと宮下、過去2作それぞれの主人公カップルを主役にした作品です。
その後のそれぞれが描かれていて、ほんわかした内容です。
終了した少女漫画で一緒になったカップルは、その後、破局を迎えるのかもしれない、それは作者にも読者にもわからないことですが、少なくとも『~無法地帯』と『~危険地帯』2作の2組は、ずっと一緒に続いていくのだということを感じられる作品でした。
『きのうと今日とそれから』が2012年なので、もう続編はなさそうですが、こんなブラックな会社は幸い(?)現在も存在しているので、変わらないままさらっと続編が描かれたら嬉しいなと思いました。

午前3時の不協和音

レビュー(79)件

完結・全1巻

4.1

4巻まで読みました

『午前3時の無法地帯』の続編です。
前作と同じパチンコ専門のデザイン会社が舞台で、主人公は、前作主人公の後輩にあたる「小倉たまこ」にバトンタッチします。
七瀬ももこを始め、前作登場のメンバーは引き続き登場します。
本作からでも問題なく楽しめますが、漆黒の職場環境がインパクト無く登場するので、前作から読んだほうが楽しめると思います。

主人公・小倉たまこは、父が勝手に履歴書を送ったデザイン会社・P-DESIGNで面接をします。
社会人経験無い上、面接でろくに受け答えできなかったのですが、突然入ってきた社長の鶴の一声で採用されてしまう。
パンツマンがうろつく女子には険しい職場に、試用期間の内に辞めてしまえと考えるのですが、社員旅行先がマウナ・ケア山と聞き、踏みとどまります。
結果、社員旅行は無しになるのですが、そのまま流されるように、仕事をこなしてしまうという展開です。

たまこは、色気なし、天然パーマでメガネスタイルで地味なキャラですが、面接をした堂本に憧れを抱いてしまう。
一方で、発注元のパチンコ店で出会った宮下に気に入られてしまう。
本人は恋愛からは一歩引いて過ごしていて、それどころではない業務多忙の中にいながら、いつの間にか恋愛の渦中に飛び込んでしまいます。
前作では極悪な環境の中でさばく仕事のやりがいや生き方がメインで描かれていて、恋愛要素はおまけ感ありますが、本作の主人公は引くくらい能力が高く、メインは恋愛になっています。
どちらの生き方がどうというわけではないのですが、個人的には、前作主人公のももこは暴走気味に感じ、読んでいてハラハラしました。
行動が理知的なのに振り回されるたまこがかわいらしく、本作のほうが私は好みです。
とはいえ、作品としての雰囲気は変わらないので、前作で良かった方は本作も楽しめると思います。

午前3時の危険地帯

レビュー(108)件

完結・全4巻

4.2

12巻まで読みました

ビレバン族のバイブル的存在である浅野いにお氏の作品。
氏の作品は短い作品が多いのですが、本作は『おやすみプンプン』と同じく、10巻以上続いた長編です。

突如東京上空に巨大な宇宙船が現れ、ビルをなぎ倒し、旅客機を墜落させ、多くの人々死傷させる。
だが、米軍による爆撃でほぼ制圧され、浮力だけをかろうじて残していると思われる巨大な宇宙船だけが東京上空にふわふわと漂っている。
そんな世界で生きる、平凡でごく一般的ななかよし女子高生「小山門出」と「中川凰蘭」、その親友たちが本作の主人公です。

プンプンのような極端なデフォルメやシュールギャグ、一方で地獄のような極鬱展開はゼロではないものの控えめで、本作は氏の新境地と言ってよいと思います。
絵のタッチやポップさ、隙きあらば小ネタを挟んでくる"いらんことしい"さ加減は健在なので、いにおの過去作品が好きな方は問題なく楽しめると思います。
凰蘭は、太眉離れタレ目で、顔面から体液を垂れ流し「はにゃにゃフワーッ!」が口癖の愉快なキャラ設定です。
その他のキャラもあくが強くてぶっ飛んでいますが、魅力的でかわいらしく、主人公たちの動きを追っていきたい気持ちにさせてくれます。
序盤は、世界情勢や迫りくる危機とは無関係に、無敵の女子高生たちは日々をオラオラと謳歌していますが、身近な人の死や謎の言葉を操る不思議な青年との出会い、そして意外な真実が明かされ、最終的に大きな渦の中核となります。
よくある終末ものかと思いきや、実態はシュタインズ・ゲートに近い内容でした。

終盤は非常に意外な人物が行動することで、物語が収束へと向かいます。
ただ、なぜ彼である必要があったのか、彼が行動することでなぜ収束したのかが良くわかりませんでした。
ストーリーの中核がぼやけていて、すっきりしないまま終わった感じがあり、賛否ある終わり方だと思います。
ラストでは謎の飛行物体が登場し、どこからか「はにゃにゃフワーッ!」という声が聞こえたり、作中劇であるマンガが消滅したりしています。
何かを匂わせるような描写が多く、ちゃんと理解するためには考察が必要だと思います。

1巻無料

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション

レビュー(274)件

完結・全12巻

4.3

3巻まで読みました

さそうあきら氏の代表作。
文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞、また、手塚治虫文化賞 優秀賞受賞し、当時、映画も話題になりました。

名門の音楽大学を目指している浪人生の菊名和音が、ある日、野球をしていた少女・成瀬うたと知り合います。
強引に家に上がり込まれ、迷惑に感じる和音でしたが、うたが彼の部屋のピアノに触れたとたんに世界が一変します。
個人的にはさそうあきらといえばセックスがテーマのマンガが多いイメージです。
本作中でもそういう描写は無くは無いのですが、基本的には"神童"と言える少女の苦悩が描かれた作品となっており、『のりりん』を読んだときのような意外性を感じました。

うたは、明確に天性の才能を持っているのにも関わらず、その才能を一般的に認められていません。
天真爛漫な振る舞いで周囲をざわつかせ、圧倒的な技術で周囲を黙らせる展開が多く、基本的にうたの性格は最悪です。
人によっては傍若無人な振る舞いにイライラする可能性があり、そういうキャラが苦手な方にはおすすめできないです。
終盤には、そんなうたに悲劇が襲いかかり、その絶望の中で何をするのかというドラマが展開されます。
文庫版で全3巻と短く、展開はわかりやすく読みやすい作品だと思います。

菊名和音は、もう一人の主人公としてスポットがあたっています。
うたに振り回されながら、成長していくのですが、彼もまた天才と呼べるキャラで、荒唐無稽な存在として描かれるうたと対象的に全うに挫折しながら実力を認められてゆきます。
そんなうたと和音の交流が描かれていて、様々な音が作中では流れるように感じます。
ミュージックとしての音楽ではなく、いろんな"音"が中心に据えられていて、裏表紙にも書かれている通り、本作の主役は"音"なのだと思いました。

神童

レビュー(5)件

完結・全3巻

4.2

6巻まで読みました

『島耕作シリーズ』八作目。
相談役だった万亀健太郎が病で退陣し、代わって相談役に就いた島耕作の日々が描かれます。

会長以上に相談役というポジションが謎だったのですが、1巻序盤で、"相談役"とは何かを説明してくれるのがありがたかったです。
島耕作曰くには、相談役は会社法で決められた役職ではなく、肩書の通り、社長や会長からの相談を受ける、アドバイザーという立場だそうです。
豊富な経験、人脈の広さ、決断力が求められますが、会社法で定められていないため、待遇等は会社との委任契約によります。
よって、会社の経営に深く関わっていますが、社長や会長の補佐的なポジションであると言えると思います。

会長に引き続いて実務に忙殺されるシーンはないです。
ただ、新社長として据えた風花凜子の社内でのポジションが怪しく、相談役として島耕作に判断が委ねられます。
会長の更に先のポジションにいますが、引き続き陰謀や戦いに忙しい内容となっています。
なお、相談役を置くことにはデメリットもあり、現実では東芝が2015年に相談役制度を廃止しています。
TECOTでは相談役制度があるようですが、そのメリデリも記載されていて、色々ためになる作品だと思います。

風花社長の社内騒動に始まり、中国ファンドがTECOT乗っ取りを画策するなど、本作でも様々なトラブルが発生します。
それらに対し、島耕作は自らのコネクションを駆使し、経験から助言を行い、スマートに対応しています。
大口を叩かず、しゃしゃり出ずに相手を立てるやり方はさすが島耕作と思いました。
時世ともリンクしていて、コロナ前ということもあって2020年東京オリンピックを題材に、スポーツビジネス分野に切り込みを入れるシーンもあります。
また、本作からは、新型コロナウイルスがまん延し始め、島耕作自身も新型コロナに感染しホテルで隔離生活を送ります。
隔離生活の様子、そこからアフターコロナのイメージとビジネスのヒントを、死にかけながら貪欲に得ようとする姿勢が頼もしいです。

企業としてのLGBTQ+の取り組みも描かれていて、相談役となっても変わらず、未来を見据えた作品だと思います。
テンポも良く、サラリーマンマンガを普段読まない方でも楽しめるシリーズです。

ラストで島耕作はある決断をします。
島耕作は新たな道を進み始め、その内容が続編に続きます。
そろそろ定年後島耕作でも良いのではないかと思うのですが、ここまで読んできたので次も追いかけ続けようと思います。

相談役 島耕作

レビュー(11)件

完結・全6巻

3.9

2巻まで読みました

ぱにぽにの登場人物「桃瀬くるみ」を主役にしたスピンオフ。
商店街にある喫茶店・エトワールでバイトをしているくるみの日常を綴った内容となっています。

くるみが主人公ですが、くるみ視点の話はあまりなく、どちらかというと喫茶エトワールの店長視点となる話が多いです。
ぱにぽに同様、基本は4コマで、特にストーリー展開はなく、非日常な日常が展開されるあたりもぱにぽにっぽいです。
ぱにぽに本編と異なる点として、"萌え系"に特化した電撃萌王で掲載されており、主にオタクな店長によるマニアックな会話が繰り広げられます。
連載は2002年から2008年だったので、今読むと非常に懐かしい内容となっています。
『宇宙のステルヴィアのしーぽん』とか、そんなキャラ流行ってたなーというキャラの話題が登場したり、『週刊わたしのおにいちゃん』という、今販売したら100%アウロリフィギュアが付属された雑誌の話題が出てきて、記憶の底に埋没されていたものが採掘されたような気がしました。
フィギュアをキャストオフするためには壊さないといけないので大事に取っといた記憶があるのですが、あれどこにやったんだろう、忘れた頃に見つかると危ない気がします。
他にも、GAの主題歌が流れたり、ニニンがシノブ伝のキャラがゲスト出演したりするので、懐かしさで切なくなりますね。

絵も掲載誌に合わせて萌えを意識したような感じがしました。
ただ、読者サービスに乏しいくるみちゃんがメインの作品なので、絵はかわいらしいですが、サービス展開や萌えはあまり無いです。
オタクが内輪ネタでキャッキャするだけでちょうどいいような内容だと思います。
ぱにぽにからのキャラも一部登場しますが、ベッキーやめそうさは登場せず、読んでなくても問題なく楽しめると思います。
どちらかというと、2巻後半にサービスで絵が載っているこつえーやYUGなどで喜べるかが問題かと思います。
そういった意味で、上級者向けの作品です。

テンポはいいのですが、他作品の小ネタが多いです。
個人的には本編より楽しめましたが、人を選ぶ作品だと思います。

まろまゆ

レビュー(1)件

完結・全2巻

3.9

2巻まで読みました

氷上へきる氏のギャグマンガ・ぱにぽにに登場する「ベホイミちゃん」を主役にしたスピンオフ。
ぱにぽに連載時に並行して連載していました。
そのため、雑誌掲載時にはぱにぽに本編とリンクする部分もあったようですが、特に違和感なく楽しめました。

ベホイミちゃんが魔法少女となるまでの経緯や、本編では語られなかった魔法少女としての活動が主になっています。
都内のボロアパートに一人暮らしをする地味系女子高生ベホイミちゃんは、ある日、突然訪れた宇宙人に「魔法少女になって地球を守ってほしい」と頼まれます。
突然の宇宙人、突然の魔法少女へのお誘いに混乱するベホイミちゃんですが、魔法少女になることを承諾します。
後はいつものぱにぽにのノリで、とんでも宇宙人たちの攻撃に、ずっこけながら、落ち込みながら、時にはビシッとバシッと魔法少女をやる展開です。

ちなみにぱにぽに序盤のベホイミちゃんは常時魔法少女状態でしたが、その設定は作者が忘れたのか、本編の設定とリンクしていませんでした。
また、ベホイミちゃんといえば、過去に特殊部隊所属経験があったような行動があるなど、割りと謎多いキャラですが、そのあたりの説明もなく、メディアもぱにぽに本編同様のポジションで登場します。
ぱにぽにのキャラも一部登場するので、本編を読んでおいた方が楽しめると思いますが、あまりスピンオフであることの活用はされないので読まなくても大丈夫と思います。

ぱにぽに同様、コマ割りは散らかっていますが不思議に読みやすいです。
キャラもポップでかわいらしく、新キャラの小学生魔法少女もお気に入りです。
ただ、ラストは明確に最終回で締めくくられず、掲載がないままぱにぽにも終了し、事実上全2巻となっています。
そのため、ストーリーの縦軸であった宇宙犯罪者が根絶したような描写はなく、戦闘用人造人間の登場の予兆だけ残し、続くけど終わるような終わり方になってます。
とはいえ、グダグダなまとめは毎話のことなので違和感は無く、十分楽しめるスピンオフでした。

新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん

レビュー(2)件

完結・全2巻

4.6

8巻まで読みました

15世紀ヨーロッパのとある国を舞台に、教えに背くため禁じられた『地動説』を危険を犯して研究し、そして死んでいった人々を描いた作品。
なお、中世ヨーロッパで宗教の教えに反する理由により地動説を弾圧したという歴史的事実は無く、本作は完全なフィクションです。
本作を鵜呑みにして、『昔は地動説を信じると勾留された』みたいな話をドヤ顔でしてしまうと、逆に変な目で見られるので注意が必要ですね。

タイトルの"チ"は、地、血、知の意味があります。
15世紀、ヨーロッパのP王国では、C教という宗教が中心となっています。
その宗教の教典では"地は動かない"旨の記載があり、人々は教えに沿って、世界は地球を中心として天が動いている"天動説"が絶対のものとなっていました。
主人公の12歳のラファウは、大学への進級が決まっており、神学を専攻するつもりでした。
そんな折、異端者として捕まっていた学者・フベルトと知り合います。
研究を続けるため、改心したと嘘をついて出てきたフベルトは、ラファウに地動説を伝え、ラファウはそれに心奪われます。
だが、異端審問官のノヴァクは、そんな彼に疑いを持っていた、という展開です。

"C教"というと、Catholicを想起しますが、恐らくモデルとしていますが、架空の宗教です。
一章の主人公として12歳のラファウが据えられていますが、話が進むに連れて主人公は変わります。
ただ、その情熱、研究だけが、何らかの形で伝えられる、という内容です。
現実では、教会とアリストテレスが天動説をドグマにし、後にガリレオ・ガリレイが地動説を唱えましたね。
ガリレイが異端扱いされたのはガリレイが教会から快く思われていなかったためというのは、現在では一般的ですが、本作は地動説=異端ということにした上で、誇張した内容となっています。
地動説を唱える学者は地下で研究を行っており、バレると拷問され、研究は燃やされて、火あぶり、つまり復活に必要な肉体も焼失させられます。
ためになる作品かと思いきや、意外に血生臭く、拷問や自害のシーンも生々しく描かれています。

常識と異なる研究を反対されても信じ続ける人々が熱いです。
グロいシーンもあり、テーマもニッチで全体的に重いですが、引き込まれる作品でした。

チ。―地球の運動について―

レビュー(896)件

完結・全8巻

4.4

11巻まで読みました

太平洋戦争下で戦場となったペリリュー島での戦いについて描かれた戦争マンガ。
史実を参考にしたフィクションで、漫画家志望だった初年兵「田丸均」一等兵の目から、戦争の陰惨さを描いたものとなっています。

南海のペリリュー島に、「とりあえず殺れるだけ殺って死んでくれ」という任務を背負って降り立った小隊の物語です。
食料も物資も無い孤島で、飢えに怯え、アメリカ兵に警戒しながらサバイバルを続ける内容となっています。
その頃の日本の戦局や作戦状況等の描写はなく、日本は、戦争はどうなったのか知らされないまま、兵隊たちは来るはずのない応援を願います。
描かれているキャラは等身が低くデフォルメされてますが、撃たれ、刺され、生きたまま腐り、恨み言を口にしながら死んでゆく様がリアルに描写されています。

ペリリュー島で作戦行動をしている小隊の活動内容にのみスポットがあたっており、戦局や大本営の様子などは描かれないです。
戦艦だったり政治だったりについても描写はほぼ無く、戦争を知るというよりは、戦場そのものを知る内容と思います。
基本的には、病気や怪我で少しずつ仲間が死んでゆく展開で、ひたすらに悲惨でむごたらしいです。
一緒に語り合っていた仲間が、潜伏先ごと燃やされたり、生き埋めにされたりします。
かわいらしさすら感じるタッチですが、描かれている内容は地獄で、考えさせられる作品だと思います。

後半はすでに日本は降伏をした後であり、客観的に見て死ぬ必要が無い兵士たちが玉砕してゆきます。
親がいて、妻子がいて、生活があった、だけど死んだ、それも戦争は終わっていたのに、そこに何とも言えない悲しさを感じました。
作中では、戦争が終わったことを伝えるビラが撒かれ、『日本で白人と日本人が仲良く撮影されている雑誌』を兵隊たちは目にしますが、それでもそれは敵の作戦であり、戦争は続いていると信じて疑わなかった。信じるわけにはいかなかった。
本作では、ペリリュー島で戦い続けた、日本兵たちの信念を描き出した傑作だと思います。

ただ、作者も戦争に参加したわけではなく、本作は聞き込みから描いたフィクションとなります。
その点については終幕時にも書かれていて、本当の戦争とは、マンガや小説、映画で描かれているものでは根本的に描けないものなのだろうなと思いました。

ペリリュー -楽園のゲルニカ-

レビュー(50)件

完結・全11巻

3.6

16巻まで読みました

週刊少年ジャンプで連載していた、"みどりのマキバオー"の続編。
掲載誌は青年男性向け雑誌の週刊プレイボーイに変更になりました。
前作では、後半から国ごとのチーム戦であるドバイワールドカップという架空のレースにシフトし、通常あり得ない障害物レースを行うなど少年漫画らしい展開でしたが、本作は一貫して実在のレースを扱っており、前作よりも競馬ファン向けの作品になっています。

主人公は前作で登場したマキバオーの半妹・マキバコの産駒である「ヒノデマキバオー」です。
彼は、中央競馬からデビューを目指して入厩するのですが、事情により高知の福留厩舎に転厩しています。
中盤までは高知県を中心とした地方競馬での活躍を描いており、地方競馬の事情やシステムの解説が挟まりながら進行していきます。
中盤以降は全国のレースに出場し、その実力を確かなものにしていく展開です。

ミドリノマキバオーと比較すると下ネタギャグは控えめになっています。
前作同様、馬や動物たちは人間と会話することができる設定ですが、故障馬の処分や種牡馬になるなどの展開はなく、前作以上に馬が人と同じような扱いになっています。
ギャグシーンはないわけではないですが、内容はレースや特訓がメインで、競馬ファンのために描かれているような部分を感じました。
競馬を知らなくても楽しめはしますが、地方でも中央でも、馬券を握りしてめてお馬さんを応援した経験がある方が楽しめると思います。

ヒノデマキバオーの見た目はミドリノマキバオーと同じで、違いは前髪のみです。
ミドリマキバオーは馬にしては小さすぎるため、騎手に苦労をしていましたが、ヒノデマキバオーも同様で、乗りこなせるのは作中の「福留隼人」のみとなっています。
前作の菅助同様、隼人もまた、もう一人の主役として、マキバオーとともに各レースに挑戦してゆきます。
なお、前作の山本菅助も本作に登場しますが、なぜか等身が増えており、普通の馬に騎乗し隼人のライバルとしてレースで競い合います。
逆に言えば、前作で登場したキャラで本作でも登場するのは菅助くらいなので、前作みどりのマキバオーは未読でも楽しめると思います。

前作と差異は多いですが、前作と変わらず熱い作品です
レース終盤限界状態の馬たちが一着ゴールを目指してしのぎを削るシーンは、本物のレースを間近で見ているような臨場感がありました。
なお、本作で完結をしておらず、引き続きタイトルだけ変わった『たいようのマキバオーW』に続きます。
本作ラストでは重要なレースを横並びでゴールインして、結果表示がされないまま続くため、次回作も読まないと終われないですね。

たいようのマキバオー

レビュー(17)件

完結・全16巻

4.2

4巻まで読みました

サラリーマン金太郎シリーズ4作目。
前作の"新サラリーマン金太郎"ラストで、怪童社立て直しの後、警察に連行され社長を退陣しました。
本作も引き続き金太郎の活躍が描かれますが、過去シリーズ同様、前作までのエピソードは一旦クリアにした新シリーズとなります。

タイトルの通り、50歳になった金太郎が主役です。
いろんな業界に殴り込み、八面六臂の活躍をして去っていく金太郎ですが、本作では一貫して電力会社の話となっています。
連載された2015年、2016年は東日本大震災から4,5年後、東北は奇跡の復興を行っている最中、福島第一原発も廃炉に向けて作業が続けられているところです。
復興に目を向けている状況下で、皆が忘れたい原発の廃炉作業を描いた作品で、これまで以上に社会に訴えかける内容だと思います。

3年の放浪の後、日本に帰ってきた金太郎は、中村加代の口添えで、電力会社の平社員として入社することになる。
同時期、秋田六区で当選した代議士「伊達三郎」が登院します。
両者同じく暴走族上がりの二人はやがて手を組み、金太郎は電力会社側から、伊達は政治側から、原発問題に取り組むという内容です。

電力会社内部の腐敗、政治家との癒着を批判し、目隠しされた目前に迫っている危機を詳らかにして、できうる対処を誠実に行う展開です。
過去にも、マネーウォーズでは投資の、出版業界立て直しの際にはIT関連の専門分野での情報が突破口となっていましたが、本作でも原子力発電所がメルトダウンするとはどういうことなのか、専門的な用語が飛び交います。
例によってすべて理解することができませんでしたが、作品を書く上で作者がどれだけ丁寧に取材してきたかが内容が伝わってきました。
読む人が読めば粗もあるのだろうと思いますが、知識を持たない私的には、行動に説得力を感じました。

ただ、本作は政治批判、電力会社批判の臭いが強く、作者の主張を感じます。
何が正しいかはさておき、本作で描かれていることは一つの考えであり、公平な目で読む必要があると思います。
また、過去作でもそうでしたが、本作でも最後まで解決を見届けることなく、金太郎は去ってゆきます。
道標はできており、これから先はもう安心であるというところまで描けているので、中途半端に終わっているというわけでは無いのですが、賛否は出ると思います。
個人的にはもう少し長く続けて欲しいと感じましたが、だらだら続けて駄作にするよりかは、ここまで描ければいいというところでピリオドを打つのも一つかと思いました。

サラリーマン金太郎五十歳

レビュー(6)件

既刊4巻

4.4

7巻まで読みました

サラリーマン金太郎シリーズ3作目。マネーウォーズ編の続編です。
スケールの巨大さは相変わらずで、一介のサラリーマンでは動かすことにない巨額の資本や、権力者を相手取った展開が繰り広げられます。

マネーウォーズ編から2,3年ほどの休載を経た続編で、その間、金太郎は、ナミビアの投資庁で手腕を振るっていたとなっています。
ナミビアから帰国して久しぶりに出会う家族の元、のんびり過ごそうと考えていた金太郎ですが、龍平・伊郷・黒川という3人の元社長に懇願され、倒産間近のヤマト建設の立て直しのため、ヤマト建設の社長に就任します。
以降は、いつもの金太郎で、ヤマト建設の倒産回避に貢献すると、その後、政治献金の発覚から3兆円の脱税の罪で投獄され、出所後には出版社の社長就任となります。
素早すぎる決断と大胆な一手により、多くの人の信頼を得て一気にプラスへ舵を切るのですが、マネーウォーズ編同様、これからというところで退陣します。
一番大変な部分だけを請け負い、せっかく立て直した巨大な城をあっさり他人に明け渡すので、金太郎が不憫な気がしました。
0を1にしたのであれば、それを10にも100にもして育てたいと思うのが人情だと思うのですが、どうも金太郎はいいように使われているだけのような気もしてきます。
マンガとして面白いのですが、ポジションに腰を下ろし、業界展望を見据えて事業継続する金太郎も見てみたいと思います。

各業界を飛び回るのですが、数字関連のところは難しくて読み飛ばしてしまったというのが正直なところです。
それでも破天荒な金太郎の振る舞い、めちゃくちゃだけど理にかなった指示は、テンポよくて読みやすく、楽しく読めました。
前作のマネーウォーズ編よりは比較的理解しやすい内容だったように思います。

なお、新サラリーマン金太郎には、"新サラリーマン金太郎 順不同"という番外編も収録されています。
数話程度で完結する短編なのですが、突然、金太郎の暴走族時代や新社会人時代、少年時代などへ舞台が切り替わるので、知らずに読んでいたときは驚きました。
また、"順不同"は、細く設定を追うと矛盾があり、パラレルワールドという設定だそうです。
パラレルワールドといっても、ifの金太郎が描かれるわけではなく、設定や細かいことを気にしなければ、単純に金太郎の若い頃のストーリーとして楽しめます。
"順不同"も含め、でっかくて熱い男のマンガです。

新サラリーマン金太郎

レビュー(16)件

完結・全7巻

4.3

8巻まで読みました

"新・コータローまかりとおる!"に続く、コータローまかりとおる!シリーズ続編。
"新"連載終了後にマガジン本誌で連載開始し、その後、マガジンSpecialに移籍し連載続けてましたが、作者体調不良のため長期休載、そのまま掲載誌も廃刊となってしまいました。
そのため、2022年8月現在では、2004年10月に発売された8巻が最新刊です。
休載となったまま約18年経過しており、続刊は難しいと思います。

登場人物や設定は引き続きです。
ただし、柔道編で新登場となったメンバーはほぼ登場しておらず、後百太郎のみが端役で登場しました。
再び天光寺輝彦や如月剣次などがメインキャラになっているため、"新"よりは無印のコータローまかりとおるに雰囲気としては近いです。
ストーリー開始早々、懐かしのD地区が登場し、蛇骨会の騒動について振り返る展開があり、そのため、前提として"新"よりは無印を読んでおく方が楽しめると思います。
なお、無印の連載は1982年開始なので、さすがにそこから読み続けている方のみをターゲットにするわけにいかない様子で、コマの左右の余白に解説が入ったり、コミックス版では各話の間で過去ストーリーの振り返りが描かれています。
陽気でお下品で、テンポが良いのは相変わらずなので、本作からでも十分楽しめると思います。

本作ではコータローの母が登場し、コータローの家が忍者の家系であったことが明かされます。
アメリカから帰国したコータローの母・功流美だが、同時にアメリカから、新堂家に伝わる秘伝の虎の巻を狙うアメリカ忍者を連れてきてしまう。
襲いかかってくるアメリカ忍者と、コータローたちの戦いを描いた内容となります。
ただ、前述の通り、途中休載になっています。
8巻時点では、さらわれた功流美を助けるため、コータローたちがアメリカ忍者の敵地に乗り込んで大暴れしているところまでで、虎の巻とは何なのか、なぜそれを狙っていて、奪われるとどうなるか、そもそもタイトルの"L"はどういう意味なのか等、不明のままです。

すごく面白くて読みやすいので、過去作を読んだ方は引き続き楽しめると思いますが、キレイに解決しておらず、中途半端にぷっつり途切れるのが残念です。
難しいと思いますが、続編を心待ちにしています。

コータローまかりとおる!L

レビュー(9)件

既刊8巻

4.5

11巻まで読みました

冴えない中年男を主役にした作品です。
福本作品ですが、非日常な状況で行われるギャンブルがテーマではなく、悲しいくらいに現実的なおっさん的行動、思考が描かれています。

主役である黒沢は、穴平建設に務める土木作業員です。
44歳の誕生日を迎えるが誰にも気づいてもらえず、満ち足りていない日々に苦悶を懐き、人望や人気を手にするために一念発起する展開となります。
後輩の赤松を一方的にライバル視して空回り、更には誤解されて逆に鼻つまみにあう様は、現在若者の輪に入れず浮いてしまう職場のおじさんたちも同じものを感じると思います。
人望を得るために策を講じて失敗する、変わり者扱いされる、ある意味、悲しき中年独身男の宿命とも言える日々です。
普通であればそれで終わるのですが、あまりにも考えなしというか、酔っていて前後不覚となっていたということもあって、まあとある出来事を境に仲間の羨望を集めることとなります。
以降は、その名が独り歩きする形で戦いに巻き込まれてゆくストーリーです。

黒沢は基本的には気弱で、スポーツとかも一切やらない中年腹のオヤジですが、身長180cmを超えガタイは良いです。
その体格を利用した、テクニックによって敵を蹴散らすようなケンカは描かれず、戦闘スタイルは小細工に頼っています。
その方法は本気で容赦がないです。
例えば、作中黒沢は、レスラー3人と戦うことになりますが、その時は取り出した人糞を投げつけて勝利します。
人としてどうか、とか、それは勝利と言えるのか、とか、そういうことはともかく、とりあえずその場を収集つける手段が『うんこ投げ』になったわけです。
確かに、どんな怖いお兄さんが相手でも、うんこ投げられたら逃げるしか無く、本当に窮地に立たされたら、それくらい必死に行動して切り開けというメッセージが伝わってきます。
これは極端な例ではなく、本作中のバトルは基本的にこんな感じで、追い詰められた中年男性が、本気で状況を打開するために行動する内容が描かれています。
決してかっこよくなく、女性にも間違いなく逃げられますが、"生き抜くためにやる"その立ち姿や、熱い言葉は、諦めかけた読者の心を鼓舞させるものがあると感じました。

と書くと、熱い作品のようですが、基本的には、中年男の哀愁漂うギャグマンガです。
黒沢はケンカの強い中学生「仲根」に慕われますが、巨乳のお姉さんにモテモテの仲根よりハワイから電話があり、「向こうはFカップGカップ・・・オレにあるのはスーパーカップ・・・!」というセリフは、本作を象徴する名言ですね。
テンポも良く面白いですが、ラストはもやもやを残してぷっつり終わります。
続きは約6年8ヶ月越しの続編で描かれるので、引き続き続編も読みたいと思います。

最強伝説 黒沢

レビュー(118)件

完結・全11巻

3.8

9巻まで読みました

ある荒廃した人工天体での出来事を描いたSF作品。
舞台となるのは、直径十二万キロメートルの人工天体アポシムズ。
物語の最初に、その体積の大半は超構造体の殻で覆われた地底空間であること、五十世紀前に地底との戦争に敗れた人々は極寒の地表に取り残されたこと、そして人形病という病が蔓延しており、遺跡層には攻撃的な自動機械が頻出することが説明されます。
主人公は地表の居住地"白菱の梁"で育った「エスロー」という青年です。
彼は白菱の梁で教育係をしていたのですが、遺跡層で食料採集の最中にリドベア兵に襲われる自動人形と遭遇し、そのいざこざから仲間を守るため、兵士を撃ち殺してしまいます。
その報復として、白菱の梁はリドベア兵に襲われ、エスローの仲間たちは殺されてしまう。
エスローもまた、敵の攻撃を受けて命を失おうとする直前に、助けた自動人形「タイターニア」からの提案を受けて正規人形に転換し、以降、リドベア帝国との戦いに身を投じる展開となります。

設定が細かく、複雑で難解です。
その一方で、最低限の舞台説明が最初に行われ、以降はストーリーを追って把握する必要があります。
練り上げられた設定に関する説明を逐一行うことはないため、設定の難解さの割に文章は少ないです。
戦闘シーンが多々あるのですが、絵は全体的に白い感じあり、激しさの割に淡白なイメージがあります。
登場キャラの大半は死にますが死亡シーンもあっさりしていて、主要人物でさえいつ死んだのかわからなくなることが度々ありました。
ストーリーはサクサク進むので、気がついたら筋がわからなくなり、読み返してみるけど読んだはずの過去のページに見覚えがなく、どのあたりから読み返せば良いのかわからなくなるという、我ながら理解力に嘆いてしまうことがありました。
何度も読み中に寝落ちすることもあり、個人的には読み切るためかなり体力が必要でした。

ただ、理解できればかなりおもしろい物語です。
荒廃し、マスク無しで住めない地表にて、奇病に怯えながら行き続ける人々がおり、リドベア帝国という大国が少ない資源を独占するため支配権を広げている。
コードと呼ばれる装置により、高い適合能力を持つ人間は正規人形に転生できるが、その確率は非常に低い。
正規人形になればマスクは不要となり、外観が自在に変化し、特殊能力を身に着け身体能力が凄まじく向上する。
基本的にはエスローとタイターニアと、リドベア兵の正規人形同士の戦いとなりますが、途中、第3勢力として人形病患者で軍勢を作り、リドベア帝国を壊滅させて地上を平定させる『新地底教会』が現れ、混戦を極めます。
ストーリーが進むたびに登場人物も増えて難しくなってゆくので、腰を据えて読むのをおすすめします。

ラストはすごく駆け足感がありました。
これまで登場した個性的な正規人形たちが激突し、特に各自の見せ場もなくフェードアウトします。
タイターニアはどこに行ったのか、なぜ地底にいるのか、何がなんだかよくわからないままハッピーエンドっぽくなり、ここまで頑張って読んできましたが、クエスチョンマークの浮かぶ終幕でした。
終盤まで良かったのに、この幕切れは、正直微妙でした。
他方の感想を読むと、弐瓶勉作品のラストは割りとこんな感じだそうなので、わかっている方向けなのかなと思います。

人形の国

レビュー(171)件

完結・全9巻

3.8

13巻まで読みました

過酷な現場で社畜として働く中年サラリーマンが、事情により女子中学生の少女と同居することとなってしまうという作品。
作者はエロ漫画畑出身で、設定もエロゲーまがいですが、内容は極めて真面目です。

主人公の「東根将彦」は、ゲーム業界に務める中年独身のサラリーマンです。
彼は、入社以来欠勤したことはなく、会社に何日も泊まってプロジェクトを遂行する根っからの社畜です。
ある日、彼の高校時代の友人・君島里見の娘と名乗る少女「君島優里」が訪ねてきます。
優里は"将彦を頼れ"というメモを母から預かっており、困り果てた将彦は、「母親が帰ってくるまで」という約束の元、優里と同居生活を始めるという展開です。

作者は成人向け漫画作家として著名な板場広志氏。
本作の掲載誌も成年向け雑誌ということもあり、作中には性的描写がありますが、(当然のことながら)優里のセクシーシーンは無く、基本的に健全です。
将彦は常識的で誠実な人物で、優里に対しては父のような感覚で接します。
そんな将彦と優里の日常や、会社の激務に翻弄される日々が描かれています。

血の繋がらない親子ほど年の離れた男女が同居していること自体が問題ですが、そのあたりもしっかり描かれています。
ある日、将彦の家に警察官がやってくるシーンは、そりゃそうなるよなと思いました。
作品中盤以降は、そのあたりもクリアした形になるので、単に中年リーマンが女子中学生と一緒に住むだけの、危ない作品ではないと思います。
世間一般的に見て好奇の目に晒されかねない、"こういう形の人間ドラマ"であり、面白く読めました。

ただ、中年社畜のはずの将彦は清潔感のあるイケメンで、そこだけアンリアルさを感じました。
見た目腹も出ておらず、肌もキレイです。
徹夜明けとか髪の毛は油でベタベタになってて、道を歩く人皆敵に見えるくらいだと思うのですが、将彦は夜勤中、美人上司とオフィスラブに勤しむので、社畜でいいからこんな職場に入社したいですね。
また、将彦は優里の担任教師と恋仲になるのですが、彼女を以前から狙っていた男性教師の行動が酷過ぎでした。
普通に犯罪者で、どこかで罰が下ると思いきや、その男性教諭の都合のいいように事が運んで、そのままフェードアウトする胸糞展開なので、そこだけは許せなかったです。

ラストは、個人的にはすごく良かったです。
そこに至るあれやこれやを思い返せば、最も祝福すべき着地点だっと思います。

6巻無料

社畜と少女の1800日

レビュー(32)件

完結・全13巻

3.9

3巻まで読みました

パチンコ専門のデザイン会社で働く女性が、仕事と恋愛に勤しむお仕事マンガ。
タイトルは、タイトなスケジュールで徹夜作業が日常となってしまったデザイン会社の、無法地帯と呼べる劣悪な午前3時頃を指しています。
ろくに家にも帰れず、風呂にも入れず、女子であることを諦めつつある女性会社員の苛烈な日々を描いた作品です。

主人公の「七瀬 ももこ」は、デザイン会社を卒業後、デザイン会社に入社します。
ただ、その会社はパチンコ専門で、それを知らなかったももこは、常時タバコ臭く、肌着で徘徊する男性社員がいるその職場環境に耐えきれなくなっていきます。
学生時代からの彼氏の家もビジネスホテル代わりになっていて、ジェットコースターのような日々に区切りをつけるべく退職届を認めます。
そんな折、彼氏の浮気現場を目撃しますが、冷めている自分の感情に気づきます。
仕事も覚え、徐々にやりがいを感じ始め、りっぱな社畜が一丁上がりするまでのサクセスストーリーですね。

デザイン業界は華々しいイメージがありますが、パチンコ専門に限らずデザイン会社はブラックが多いという話を聞いたことがあります。
作者のねむようこ氏がパチンコ専門のデザイン会社勤務経験があり、リアリティのある現場が描かれています。
こんな漆黒の会社に技術職が働くとは思いもよらない新人デザイナーは、夢打ち破れ去ってゆくのが常ですが、ガッツのある主人公は泥だらけになりながら会社に残り続けます。
それが正しいというわけではなく、そういう生き方を選んで輝き続けている、かっこいい女性が描かれた作品だと思いました。

そんな厳しい仕事をしながら、恋愛についても描かれていますが、恋愛部分は主人公に暴走しすぎなところを感じました。
読んでいて、行動として正しいのだけど、一方的な気がしました。
最終的に大団円とはなりますが、恋愛要素はおまけのように思います。

全3巻で一旦終了となります。
主人公をバトンタッチした続編があるようなので、そちらも読んでみたいです。

午前3時の無法地帯

レビュー(190)件

完結・全3巻

3.6

5巻まで読みました

『もぐささん』の続編。
大学に進学し、地元栃木から東京に出てきて一人暮らしをすることになった「百草みのり」。
大学進学をきっかけに自分の底なしの食欲を自制し、『一日三食で間食なし』を目標に、食欲と闘うことを決心したもぐささんの日々が描かれたものとなります。

前作から舞台が変わり、キャラクターは一新されます。
前作のキャラも登場しますがチョイ役程度で、前作の主人公だった小口くんですら、料理の修行のため京都に行っており、登場シーンは少ないです。
そのため、続編ですが、前作は読んでなくても楽しめると思います。

序盤は一人暮らしを始めたもぐささんが、バイトを始めたり、大学生活をスタートさせる場面が主になります。
中盤以降、バイト先や大学の友達との交友、グルメサークルの活動の中、自制の利かない食欲に翻弄されて奇行をしてしまう展開です。
ただ、前作のようなステルス食いや目を欺いてバレないように食べる展開は少ないです。
食い意地の張った女の子が、それを恥じてひたむきに隠すのですが、たいてい残念な結果に終わる日常を綴ったものとなっています。

恋人の小口くんとは遠距離恋愛となり、もぐささんに惹かれるサークルの先輩は登場するのですが、即時玉砕します。
そのため、作中恋愛要素はほぼ無いです。
正直なところ、もぐささんを引き立てていた小口くんが本作中にいないためか、あまり主人公に魅力を感じられませんでした。
個人的には小口くんはなよなよしていて好きになれませんでしたが、本作を読むと小口くんは必要だったんだなと思います。
デフォルメされたギャグシーンが多く、温泉回や水着回などのサービスカットもありません。
もぐささんの可愛らしさで成り立っていたところがあった作品からそれを奪ってしまっており、前作のほうが個人的には好みです。

ラストも畳み出すのが唐突な感じがありました。
ただ、食欲と戦っていたもぐささんが、自分の食欲と向き合い、人として大きく成長する姿を描き出したのは良かったと思います。
前作もですが、気になる点はありますが嫌いにはなれない、良作だと思います。

もぐささんは食欲と闘う

レビュー(17)件

完結・全5巻

3.7

11巻まで読みました

探偵活動を行っている女子高生・マーニーを主役に据えたミステリ作品。
事件が起き、マーニーの推理によって解決に導かれますが、トリックを暴き犯人を特定するようなものではないです。
複雑な人間関係や登場人物の過去によって発生した事柄を解き明かすのみとなることが多く、マーニーを狂言回しとした人間ドラマを描いたような内容です。

発生する事件もほとんどが日常の謎に分類されるようなもので、殺人やその他重大な事件はあまりないです。
とはいえゼロではなく、ふとした違和感が、調べてみると重大な犯罪につながっていて、その解決に貢献するような展開もあります。
雰囲気は独特で、コナンや金田一のような探偵モノとは異なりますが、ミステリ好きには刺さると思います。

ほぼすべてのストーリーが一話完結形式で、各話で依頼があり、それをマーニーが解き明かす展開がフォーマットです。
マーニーは普通の女子高生ですが、元刑事の父が探偵事務所を開いており、自身も依頼を受け謎を解き明かす探偵を行ってお小遣い稼ぎをしています。
過去に巻き込まれた事件からトラウマがあり、それを引き起こした犯罪者「メカニック」の謎を解くことが縦軸となっています。
また、マーニーの学校にはスクールカーストのような制度があり、上流階級であるセレブ、体育会系のアイアン、学園の人気者が集まったフラワー、不良グループのスティンガーなどがあって、メカニック関連以外では、各グループ内での出来事の相談などがマーニーに寄せられる展開が主です。

一話完結形式のため、登場人物は回が進むたびに増えてゆきます。
過去に解決した出来事、依頼人物が後のストーリーに絡むこともありますが、メカニック絡みを除けば、それが伏線になっていたりすることは無いです。
そのため、正直なところ、再登場キャラの過去の事件内容を忘れたりしてましたが問題なく楽しめました。

全11巻と短めですが、一話一話がしっかり作られているのでボリュームを感じます。
一気読みではなく少しずつ読むのがおすすめです。

名探偵マーニー

レビュー(4)件

完結・全11巻

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