オノ・ナツメさんの作品の書影

オノ・ナツメ

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552

3.9

1巻まで読みました

イタリアのとあるアパートでは4人の中年男性がルームシェアして暮らしており、"5番目の部屋"を短期留学生向けに貸している。
4人のイタリア男、マッシモ、チェレ、ルーカ、アルを中心に、訪れる留学生と共に様々な物語が繰り広げられる話となっています。

直前に読んでいた同作者の"not simple"に比べるとかなり陽気で楽しい話です。
絵柄は"not simple"と同じなのにこうも印象が変わるものかと驚きました。
シンプルな線で、不運の連続からも光明を求めた洞穴のネズミのような"not simple"と比べると、イタリア的陽気さと恋とパーティーに彩られた本作は、月並ですが月とスッポンと形容するのに相応しいと思います。
物語としての完成度はとにかく、私的には本作のほうが好みです。
また、オノ・ナツメ作品はコーヒーとお菓子を準備して構えて読む必要がある作品が多いのですが、比較的ライトな感覚で読むことができる内容になっています。
本作は一続きの作品ではありますが一話一話で話が別れていて、途中で置いても問題ないと思いますが、似たキャラが多く、またキャラの出入りが激しいため、一度は通しで読んだほうが良いと思います。
他の作品同様、一本の映画を観るように楽しむ作品です。

本作は元々ウェブコミックで連載されていた作品に描き下ろしのエピソードを3本追加したものになっています。
追加エピソードもステキでした。
イタリアは窃盗や物乞いの多いイメージがあるのですが、本作を読むとイタリアに住んでみたくなります。
ラストはハッピーエンドですが、少し寂しさを感じます。一方で物語としてちゃんと結末があるスッキリとした作品でした。

LA QUINTA CAMERA~5番目の部屋~

レビュー(17)件

既刊1巻

3.2

1巻まで読みました

マフィアの娘「アイリーン」は父にボーイフレンドを殺してやると言われ、顔のバレていない恋人の代わりに若い浮浪者を身代わりに立てることを思いつく。
声をかけた男とカフェに入るが、彼は浮浪者ではなく、一年前にここで出会う約束をしていた女性と会うために待っていたという。
その相手が自分のおばだと気づいたアイリーンは、その男「イアン」にその女性は死んでしまったことを伝える。
イアンはひどく落胆する。
アイリーンは家に電話をするためにイアンと離れるが、その電話で、実はその相手の女性は存命中の自分の母であることを知る。
イアンに伝えに行くが、イアンは父の刺客によって刃物で刺され、命を落とそうとしていた。
「ジム」という男が現れ、イアンと言葉を交わすと、去ってしまう。
彼はアイリーンに、「俺は奴の事を書く。小説にして本を出す。」とだけ伝えて。

本作は彼、イアンの非常に複雑で数奇な運命を描いたストーリーです。
イアンの不運な最期をプロローグに、その幼少期から、本書一冊で彼の生涯を描いています。
オノ・ナツメらしいシンプルな線の特徴的な画風で、深くイメージを刻みつけられるような、切ない物語でした。

どこをめくっても救いのない話になっています。望まれない誕生、最愛の姉との別れ、虐待、児童買春を強いられ、姉を探してニューヨークへ、まるでエドワード・ゴーリーの絵本のような不条理な物語展開がされています。
読んでいてあまり可愛そうな印象を持たないのは、イアンが泣いたり、己の運命を呪ったりせず、超然とした態度を貫いているからだと思いますが、ハッピーエンド好きな私としては本作はあまり好きになれそうにないです。
ストーリーもさながら誤読感も複雑な気持ちにさせてくれる作品だと思いました。

完全版 Not simple

レビュー(31)件

既刊1巻

3.3

1巻まで読みました

オノ・ナツメの短編集。
モーニング・ツーに連載されていた、全6篇の作品が収録されています。
各作品は完全に独立していてつながりはありません。

タイトルのDanza(ダンツァ)は、イタリア語でダンスの意味。
各話の共通のテーマとして、主役と呼べる人物が各作品で2人出てきて、その2人の心がダンスを踊るように打ち解け合い、わだかまりが解けるようなストーリーとなっています。

各作品の感想は以下の通り。

・cornice1 長靴
両親が離婚し、疎遠となっていた父と息子。
父はワイン造りを営んでいるが、長年一緒にやってきた相棒が死んだため、手伝いをするために父のもとに駆けつけるのだが、父は自分を見ようともしないという話。
30ページとない作品ですが気持ちの変化や長い年月を感じられる作品でした。
ラストはほっこりさせられる内容になっています。

・cornice2 湖の記憶
交流のない父子の家にやってきた不思議な謎の男の話。
オノ・ナツメには珍しいSF作品で、話を読んでいて私自身も、本作のキャラと同じ、言っていることは冗談かなにかだと思いました。
オノ・ナツメキャラでSF展開をすると、どうも信じられないというか、意外な感じがします。
藤子・F・不二雄のSF短編のような話でした。

・cornice3 箱庭
ある日本人の男と、ドイツ系アメリカ人の娘婿の話。現代日本が舞台の話です。
本作に出てくるドイツ系アメリカ人の娘婿はオノ・ナツメの別作品「I've a rich understanding of my finest defenses」の登場キャラと同一人物で、cornice6のキャラともつながりがあります。
外国人が苦手な純日本人の男性と外国人の婿の、婿舅間のわだかまりが解ける話なのですが、特に何か事件やきっかけがあるわけでなく、意地を張っていた舅の気が変わっただけの話といえなくもない内容です。

・cornice4 ジェラテリーアとカラビニエーリ
十数ページで終わる超短編作品。
警備のため持ち場を離れられないカラビニエーリが待ちゆく人の食べているジェラテリーアを羨む話。
動かない近衛兵というとイギリスのそれが有名ですが、イタリアの警察は任務中にジェラテリーアくらい食べそうだと思うのは私だけでしょうか。

・cornice5 煙
仲の悪い兄弟が、古城で行われたパーティーに出席したが、地震か何かで城が倒壊し、2人瓦礫に閉じ込められる話。
本作に限った話ではないのですが、単純な線とカエルのような容姿のキャラクターで、ここまでいろいろな状態を表現できるのはすごいと思います。
視点がパラパラと切り替わるのですが、非常に読みやすいです。

・cornice6 パートナー
ニューヨーク市警察のルーキーとそのパートナーが、端的にいうと仲が良くなる話。
どこかパートナーを信頼しきれていなかったが、ある出来事がきっかけで本当の意味でパートナーとなる。
本作の主人公の一人「キース」は過去作「I've a rich understanding of my finest defenses」のキャラと同一人物で、また、このあとの作品「COPPERS」で続編が描かれています。

全編を通して、ギャグやお色気の全くない、ハードドライなストーリーでした。
おすすめの短編集ですが、わかりやすい漫画を好む方には退屈を感じるかもしれません。

Danza

レビュー(16)件

既刊1巻

3.7

1巻まで読みました

その森には、子供にしか見えないクマがいる。
そのクマはとても優しくて、一日そのクマと過ごして無事に森を抜けられたらなりたいものになれる。
そういうおとぎ話を聞いた女は、森に入っていく。
子供だから本気になれないと言われて捨てられた自分は子供に違いないから。
森の奥深く、吊橋の先にクマが姿を現す。
クマに導かれるまま、森を進んでいくと一軒の無人の山小屋にたどり着く。
おとぎ話では、クマは小屋に一人で暮らしている、日中はクマの姿で、夜になると人になる。

女はその山小屋に泊まることにするが、その晩、一人の男が現れて。

装丁はサスペンスホラーのようですが、そういった話ではなかったです。
私なぞはシリアスな漫画で、デフォルメ化されていないクマに出会う話を読むと、「あ、殺される」って思っちゃうのですが、本作はそういった意味では安心していいと思います。
逃げる、もとい逃げ続けている男と、一匹のクマのお話でした。

しっかりとしたストーリー漫画で、オノ・ナツメ作品には珍しく伏線回収が行われ、きれいに終わっています。
主人公のその後を思うと、良い未来が切り開かれているとは言い難く、これから相当苦労をすることになるだろうなとは思うのですが、“逃げた”結果であること、噛み締めさせてくれる結末だったと思います。
よくよく考えてみると、いろいろ現実的におかしいところがあるのですが、そういったところを含めて、寓話のような作品でした。

逃げる男

レビュー(16)件

既刊1巻

4.1

1巻まで読みました

イタリアのリストランテを舞台とした風変わりなラブストーリー。

再婚相手が子連れをいやがったという理由で田舎の祖父母の家に置き去りにされた娘「ニコレッタ」が、その報復に再婚相手がオーナーを務めるレストランテを訪れるが、そこは従業員が全員老眼鏡を着用した紳士というコンセプトの店だった。
老眼鏡紳士が目当ての女性客で賑わう店内で、ニコレッタも従業員の一人、「クラウディオ」が気になり始めるという話。

枯れ専のお嬢様方にはストライクな作品だと思います。
物腰柔らかくスタイルが良い老紳士たちの接客はどこか色っぽく趣があり、特に枯れ専というわけでもない淑女諸氏であってもその魅力に気づかせてくれます。
掲載誌はアダルト雑誌に半身浸かってしまっているような大人向けの女性誌でしたが、本作はエロティックな表現はなく、物質感を感じさせないそれでいて大人なストーリーとなっています。

老紳士たちは個性的で、落ち着いた雰囲気が素敵な作品です。
もちろん男性が読んでも楽しめますが、マンガにスピード感、バトルや伏線回収、可愛い女の子を求める方にはおすすめしません。
老眼鏡に萌える作品となっています。

全一巻で完結。
一つの出来事が事件なく終わって、そして日々が続いていく、スッキリとしたラストでした。

リストランテ・パラディーゾ

レビュー(65)件

既刊1巻

3.6

1巻まで読みました

オノ・ナツメの初期短編集。14作ほどの作品が収録されています。
収録作は一作あたり10ページにも満たない作品が多いです。

IKKI掲載時の短編に加えて氏の同人活動時代の作品が加わっています。
また、後ろ数ページはイラストギャラリーになっています。
オノ・ナツメの独特な絵は、後ろ暗さや哀愁を感じさせます。多くのキャラクターで姿勢が悪く、目に活力がありません。
そういうタッチなのでキャラクターが「嬉しい」や「楽しい」という感情を見せたときは逆に映えます。
重暗い雰囲気の中で「喜び」の感情が描かれたとき、大したことでもないのに心が自然と温まるような気がします。

線が少ない漫画というよりもイラストタッチの絵が組み合わさったような作品になっていて読みづらさを感じるので、個人的には氏の作品は若干苦手です。
ストーリーに伏線などの小細工が無く、醸し出す雰囲気を楽しむ作家だと思います。
初期短編集である本作収録の作品は特にその傾向が顕著で、一作一作は非常に短いのですが、読むにはコーヒーや紅茶に茶菓子まで準備する必要があると思います。

絵については好き嫌いが分かれると思います。
また、本作はプロになる以前の作品も収録されていて、特に癖の強い、有り体に言うとあまり上手ではない作品もあるため、初期作品の短編集であることを念頭に置いて読んだ方が良いと思います。
どの作品も絵の雰囲気は外れていないので、そもそもオノ・ナツメ作品が好きな方にはおすすめします。
丁重もお洒落で、本棚に差して置きたくなる一冊だと思います。

Tesoro

レビュー(12)件

完結・全1巻

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