0世紀の半ば、アメリカの近代主義から生まれた新しいデザインの流れ「ミッドセンチュリー」。 レイ・イームズ、ル・コルビジェ、柳宗理らによる建築・家具・デザインをこよなく愛する青年樋山大成(ひやま・ひろなり)は、美しく、魅力に満ちた、自分だけの理想の部屋に暮らしていた。 ところが壁をはさんだ隣りの部屋から鉄パイプが壁を突き破って侵入。その穴から大量のゴキブリがはい出し、お気に入りの家具はメチャクチャに! 怒った大成は文句を言いに隣りのチャイムを押すが、現れたのは絶世の美女・雪乃(ゆきの)。美部屋と汚部屋、美女と凡人、いまでこぼこなふたりの新生活が始まる……!
●登場人物/九条有也(高3。大学受験を控える。ドラッグにはまっている。)浦里流香(高3。ドラッグで完全にいかれている。)火倉(カフカと呼ばれている。父親はシャブ中毒で死ぬ。)●あらすじ/いつも通り九条は、家庭教師の女とドラッグをやっていっていた。この社会に不満をもつ九条にドラッグで完全にいかれている流香が近づく。流香の手にしていたものは、固まった油絵を溶かす劇薬「ストリッパー」。シャブ中で父親を亡くしたカフカは、完全にラリっていた。そして、流香はカフカにも近づいていく。九条・流香・カフカの3人は東京ストリッパー作戦を決行する。ありとあらゆるものを溶かしていく。そこに仲間外れとなって激怒した滝は、カフカに間違ってストリッパーをかけてしまう。視界を失ったカフカと出会う九条は何を思うのか。
山田玲司の短編作品。1巻完結。 タイトルのストリッパーは、ストリップ劇場のダンサーではなく、油絵を描いたあとに飛び散った絵の具を溶かして掃除するための剥離剤のことです。 作中ではまるで濃硫酸かのように、かかったらなんでも溶ける劇薬みたいな扱いをしていましたが、実際はそこまで過激な薬品ではなく、ちょっとかかったくらいならば洗い流せば大丈夫くらいの液体です。 生きること自体に答えを見いだせず、家庭教師をシャブ漬けにしてセックスをする九条有也は、17歳、大学受験を控えた高校生だった。 美大を諦めて普通の大学を受験することを選んだはずなのに、なぜか焦燥感を抱え続ける有也の前に、同級生の浦里流香がストリッパーを持って現れる。 ジャンキーの流香は美術部員の2日かけて仕上げた作品をストリッパーでぐちゃぐちゃに溶かし、それを目の当たりにすることで高揚する有也の心を見抜く。 本書を読んだとき、私はまだ感受性豊かな少年だったため、ガツンとやられた気持ちになりました。 発売当時はまだ摘発はそれほど厳しくなく、ちょっと大きな街の裏通りに行くと、シーシャや紙巻き用のハーブが普通に販売されており、そういう裏店舗への憧憬を抱かせ、冗長させた意味で、罪深い一冊だと思います。 今読むととんでもない内容なのですが、あの頃は本作品内で繰り広げられるテロリズムに近しい反社会的行動が本当にかっこよく映りました。 大人になった今だから言えますが、本作を絶対に子供に読ませてはいけないと思います。薬物乱用はダメ。ゼッタイ。 分別がつく大人が読む分には問題ないですが、どちらかというと未だにモラトリアムな大人に読んでもらいたい作品だと思います。
by うにたべたい (525)▼第5話/バットを鍋に持ち替えて中華野球拳▼第6話/夢をあなたへペット天国▼第7話/エレキ再び電気屋▼第8話/そのまんまです高田マネキン紹介所▼第9話/一見様お断り天心▼第10振り返れば奴がいるカットサロンBLACK敵か味方か▼第11話/集まれ仲間たちとれいん▼第12話/あの人は今こんな事を松山勝太郎の店▼第13話/歴史はここで作られる赤坂料亭富士▼第14話/だれにも知られずにそっとあなただけにクサヤ千石堂▼第15話/書は心の泉坂田書店▼第16話/ドラゴン初めてのおつかい八百政魚政▼第17話/あの黒服がいる店六本木黒服▼第18話/麺類による人類支配ラーメン帝王▼第19話/性で心を奪ってしまえ大人のおもちゃKKD▼第20話/オプショナル革命メガネマート▼第21話/てめえら金じゃねえ金物辰▼第22話/もう、やみつきドラッグヤマウチ▼第23話/手作りです!手で作ってます!ベーカリーBABA▼第24話/復讐の鬼宣言不死身北町店▼第25話/他の店のは、とうふじゃねえ!手作りのとうふみとや▼第26話/マスターが一番の名物かもねモンカへ▼第27話/たけだけしいですフラワーショップ花ぬすびと▼第28話/そこに笑顔がある陽気なトムの店▼倒産覚悟売りつくしセールの章▼第29話/スピード一番星おでん隼▼第30話/夕闇の華バー黒蜥蜴▼第31話/数々の苦労と挫折を乗り越えて三笠松太郎商店▼第32話/くさい…でも行きたい松の肥▼第33話/ふるさとの味おふくろの味あけぼの食堂▼第34話/夏はやっぱりこれだねひえひえ弁当▼第35話/昔から横丁のかどにずっと。そしてこれからもたばこの平野▼第36話/どうなってるの間商店▼第37話/よきにはからえ殿の店▼第38話/変態さんいらっしゃい変質屋▼第39話/プラッシーいまだに健在俵屋米店▼第40話/いろんなもの写します木下写真館▼第41話/冷えたまなざし乾いた笑い皮肉屋▼第42話/彼は店を持たない。なぜなら彼自身が居酒屋だからだ。居酒屋ジョージ▼第43話/こんな時代やさかい高う売るでえ暮利松▼第44話/一歩そこにはいればそこはパリビストロール・シェール▼第45話/商売敵
1995年に発表された短編集『羽生生純の強者劇場』に、未発表作6編を加えたリニューアル版。250ページ以上の大ボリューム、全30編の中で、黒いユーモアが自由奔放に暴れ回る。 <p> たとえば「原因不明」という短編。この短編を構成するいくつかの要素は、どれを取っても、それ単体では既視感のある設定ばかり。娘を叱る厳格な父親、家族に反抗的な息子、宇宙人の地球侵略などなど。しかしその組みあわせ方があまりにもぶっ飛んでいる。また、1ページ目から2ページ目へ移った瞬間の、世界観の原因不明の飛躍には、漫画ならではの有無を言わせぬ破壊力がある。こういった設定の組み合わせの妙や、ヤケクソ気味にすら見える勢いは、収録されたほとんどの作品に顕著である。そしてこれらは、各短編の要所要所に時折漂うどこかいとおしいようなせつなさと共に、羽生生純の天性の持ち味と言えるだろう。 <p> 本単行本には、傑作長編『ワガランナァー』の原型とも言うべき短編「キャンデーヅ」も収録されている。抜きん出てキャラの立った浮浪者3人・奇想天外な設定・爽快すぎるオチ、と素晴らしい内容。確かに、これは短編だけで終わらせるのは惜しい、と思わせる怪作である。 <p> 見たことのあるものばかりで埋め尽くされた、見たことのない光景。羽生生純の、パロディ作家としての、またオリジナル作家としての見事な手腕が存分に堪能できる。心地良いくらいのスピードで、読者を突き放し、呆然とさせてくれる濃密な1冊。(横山雅啓)