「コミックビーム」誌連載の異色のサスペンス漫画、第1巻。 <p> 仕事、家庭、人生に行き詰まった編集者、安対武。起死回生をねらう彼は、人気漫画家、差能構造の新連載を取るべく、差能の住む沖縄に向かう。しかし大ヒットというひとつの頂点を極めた差能は、今や漫画を描くことに対する一切の熱を失ってしまっていた。なんとか差能に漫画を描かせたい安対は、話し合いのために彼を夜の繁華街に連れ出す。しかし、そこでヤクザに絡まれた結果、2人はどうにもならない大きなうねりに巻きこまれ、その渦中で差能は新たなる「熱」を発見する。その「熱」とは、「人を拳銃で撃つこと」であった…。 <p> 漫画家と編集者としてではなく、対等のヤクザとしてコンビを組むことになった2人のバランスなど、設定がとてもおもしろい。1つのめぐりあわせで始まった連鎖反応で展開していく物語は、後戻りの出来ない緊張感に満ちていて、牽引力がある。そして何よりも、狂気と恍惚(こうこつ)の入り混じった圧巻の表情描写が凄い。常識的な考え方では納得できないところも多々ある登場人物の心境や行動に、素晴らしい説得力を与えている。 <p> どこに飛んでいくかわからない物語の行方は、1巻収録分だけではまだまだ見えてこない。だが、この一寸先は闇の道を高速で突き進んでいくかのような、狂ったドライブ感は、体感の価値充分にあり、である。(横山雅啓)
三次への帰郷を果たし、代々女系の神主が務める神社に居候することになった少年、天津忠尋。幼馴染との再会も束の間、不可思議な怪異に襲われる――妖怪譚「稲生物怪録」をベースとしたラブコメ伝奇漫画、ここに開幕!
00年代初頭から中期、秋葉原が電気街からオタク街へ変遷を遂げ、スマートフォンがまだ普及していない、ある意味、オタクが最も香ばしかった時代。 そんな時代に描かれたオタクを題材にしたマンガ作品。 主人公は熱血妄想オタク野郎「山本 一番星」。 ヤマモトはある雨の日に捨て猫にカサを預けるも、後で猫耳少女になって恩返しに来なかったことに憤り、彼が描いていたストーリーを叫びながら教室で暴れまわる。 その挙げ句、その子猫を拾った少女に猫耳の幻覚を見て、少女(ステファニー)をさらって帰ろうとするというヤバい展開で始まります。 萌えを題材にしていますが、メインキャラは暑苦しくてキモいオタクの集団であり、上級者向けの内容と思います。 ヤマモト以外にも、生身の女は気持ち悪いと言い放つフィギュアマニアの渡辺、メガネっ娘教団の教祖・南雲、そして、序盤は普通の青年として登場したが、"裏松下"という欲望の権化を内包する松下などなど、現実に存在したら決してお近づきになりたくない変態たちがわんさか現れて、熱い妄想バトルを繰り広げます。 秘密組織「日本国政府フェチ撲滅機関」による襲撃や、特殊工作員による秋葉原襲撃、オタクたちの妄想刑務所への収容、それら魔の手から妄想戦士たちが立ち上がり、オタクたちの熱い滾りがより固まった通称・萌玉を放つという激しい作品です。 共感はできない、否、してはならないと思いますが、描かれる彼らの脳内シチュエーションには思わず"なるほど、一理ある"と頷いてしまうこともあり、一概にキモいと切って捨てるにはどこか心が引っかかるものがありました。 健全な男であれば、大なり小なり都合の良い展開で自分を慕う女人が現れて、なんだかんだでエロい展開になったりする妄想を育むはずで、大きな声で話せない好みのシチュエーションを、欲望顕に垂れ流す、そんなマンガです。 目を背けたくなることはあれど、読む人が読めばニヤニヤしてしまうと思います。 デ・ジ・キャラットなど、当時流行していたアニメのパロディが出ては来ますが、それほど多くなく、今読んでも楽しめます。 今も昔も本質的には変わりないと思いますが、検索サイトの検索結果から個人ブログやHPが消失し、スマホやSNSが生活の一部になった今、ファッションではない心からの妄想戦士の姿はどこか懐かしさを感じました。 電気街のエロゲショップや同人ショップを仲間たちと練り歩いたあの日の熱い思いが失われたと感じた貴殿におすすめしたい一作です。
by うにたべたい (525)3.40
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発刊: 2002.07.10 ~
既刊12巻
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