神崎裕也さんの作品の書影

神崎裕也

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379

4.2

12巻まで読みました

依頼相手をマインドコントロールして自ら死の道を選ばせる殺し屋「宇相吹 正」を主人公にしたサスペンスもの。
人の醜さ、身勝手さ、対象人物の心に潜む闇につけ込んでターゲットを自殺させる、あるいは第三者に殺害させるやり方で殺人を完了させるため、そう仕向けた者の検挙が難しいことから、宇相吹は通称"不能犯"と呼称されています。

基本的に一話完結の作品で、毎話様々な理由から、相手を殺したいと思っている依頼人が登場します。
言葉巧みにターゲットに近づき、疑心暗鬼にさせて思い込みから自殺、あるいは殺人をさせるのですが、大抵は実は依頼人の早とちりだったというオチが付き、「愚かだね 人間は」 というセリフとともに幕を閉じます。
宇相吹のマインドコントロールはテレビで見るようなものとは比較にならないほど強力なもので、ほとんどの人が見つめるだけで瞬間的にかかります。
ほぼ無敵の能力で、大抵の人は自由自裁にコントロールされるのですが、ごく稀に効かない人間が現れます。
第一話で宇相吹により間接的に殺害された警部補「夜目 美冬」の敵を取るため、マインドコントロールの効かない刑事「多田 友樹」がもう一人の主人公として、宇相吹を追いかけます。

殺人の依頼人はまちまちで、高校生やギャンブル狂の中年もいます。
依頼に対し報酬を受け取っている様子はなく、終盤にはその目的のみが明かされますが、最後はスッキリしない終わり方でした。
それほどの能力を持つ宇相吹が何者かについては明かされることなく、そもそも人間なのか、わからず仕舞いです。
正体を追い詰めつつありながら、結局、存在が世間に堂々と放たれたままで終わるため、主人公は交代となると思いますが、続編があると嬉しい終幕でした。

ラストには不満が残るものの、毎話ストーリーは凝っていて面白かったです。
ただ、後味の悪い話がほとんどです。
ターゲットになって殺される人は、殺されるほどのことをしていない人、そもそも何も悪くない人が大半で、宇相吹はそれを承知の上で殺し、結末をほくそ笑みながら眺めるような内容なので、それを前提として読む必要があります。
宇相吹の周囲の人物も人の命を重視しないアレな人だらけです。
等身大の大人たちが現代社会で展開する物語なのにファンタジーかバトルマンガのように殺される、それにも関わらず妙に説得力のある作品でした。

不能犯

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