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筒井哲也
3.43
1245
新刊通知
発刊:2015.04.17 〜
完結・全2巻
25件の評価
ささ
4.0
このレビューにはネタバレを含みます。
「何かを表現するということは この世界の誰かを傷つけてしまう可能性を常に孕んでいる」「そのことを決して僕たちは忘れてはいけないんだ」表現規制について。編集者の比嘉さんのスタンスを見て、「これは面白そう」と思って、最後まで呼んだ。作家に対して、表現を自粛するよう話しかける、ただし、そんなことを言わなければならない自分自身を本当に不甲斐ないと思っている。作品を、表現を守るためにどうすれば良いのか、真摯に考えている姿に引き込まれた。そして、規制する側はやはりゴミだが、「我々は文化の破壊者と捉えられかねないからこそ、覚悟と見識が必要だ」と言っていることが印象的。文化の破壊者であることの自覚はあるんだーって。必要なのは覚悟でも見識でもなく、対象への理解だろうけど。最後はちょっと性急な感じでバッドエンドだったけど、締め方は秀逸。しかし、改めて、表現の自由って素晴らしい法律だなと。大抵の法律が動きを規制するのに対して、これは動きの自由を創り出している。
うにたべたい
3.4
"マンホール"という作品が長崎県の青少年保護育成条例で有害指定を受けた経緯のある筒井哲也のディストピア作品。都道府県の条例で制定していた有害図書指定を一元化してコントロールする法案が可決されたことにより、有識者の諮問会議によって一般的な表現であっても、描かれたマンガの表現を害悪と指定するようになった社会が舞台です。主人公はデビューしたての漫画家で、そのデビュー作が圧力を受けてしまい、掲載誌が回収騒ぎになってしまう。クレームを恐れて作品をねじ曲げるか、有害指定を受けながら描き続けるかの岐路に立たされるという内容です。マンガにおける表現の自由というのは今も昔も変わらずに存在する大きな課題であり、ある程度の規制と、その規制を決定する議決機関の存在は表現の自由を守る上でも必要です。一方でその議決機関が表現の自由を束縛する場合も当然あり、一時話題になった非実在少年に関する条例なども、可決されていれば本作のような世界も夢物語では無いわけです。そういう意味で現実に近いディストピア感があり、読んでいて考えさせられるものがありました。作中の表現は諮問会議を悪とする方向だったように思えますが、必ずしも悪とはしておらず、その意見に100%の反論もできないような描き方になっています。また、1954年、ドイツのワーサム博士の研究書から発生したアメリカのモラル・パニック、漫画の出版禁止運動や漫画本の焚書についても取り上げられており、そういった漫画の歴史を知らないままでいる方には勉強になる作品だと思います。ただ、ラストは「え、なにこれ?これでおわるの?」という感じの留意の下がらない終わり方でした。主人公が漫画家で、漫画家目線でしか語られなかったためか、いまいち結論が見えなかったです。結局のところ漫画家が食えなくなるから、漫画家が好き勝手に描くことができずストレスが溜まるからいけないのだろうか、そうではない、そういうことを伝えたいわけでは無いと思うのですが。テーマは良いのですが短すぎるのが個人的に残念でした。もう少し深く読みたかった。
せーふぁ
作者の筒井哲也先生は『マンホール』で実際に有害図書指定を受けたことがあります。そんな作者が、「有害図書指定」をテーマに描いたのが本作。主人公は漫画家。"表現の自由"が大幅に規制されたディストピア的世界で、ホラー、スプラッタ漫画を発表するも「有害図書」として規制されて思うように発表できない苦悩を描く作品。実際に現実でも、オリンピックに向けてコンビニから成人向け雑誌が消えたのは記憶に新しいですよね。エログロナンセンス、漫画はそれ込みでの日本のポップカルチャー。行き過ぎはよくないですけどね。文化は文化。それを再認識させてくれる作品でした。
パンよりうどん
漫画をはじめとする文化を守っていかないとという気持ちにさせてくれる
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