わがままちえちゃん

死んでしまった猫の生まれ変わりを想像するありさ。大病から回復し「まるで不思議な何かに押し戻されるようにしてここにいる」と感じる利根川まい。偶然性と面と向き合えない私たちは時折そんな「わがまま」を言う。
亡くなった妹の声が「聞こえるような気がする」という塙ちえもそんな一人だ。妹が生きていて、代わりに自分が死んで幽霊になっている都合のいい夢を見たかと思えば、自分が子供を産む時、「その子がさほだったらいいな」とも考える。
「さほはさほで 弟は弟で ちえはちえでしかない」し、それに彼女はあの時、ただ単に、無意味に死んだのだ。そんなことはわかっている。
けれども、あの時のことを後悔しながら、気休めでしかないのかもしれない「わがまま」を呟きながら、後ろ向きで前に進んでいく彼女たちのその「わがまま」を「単なる慰め」だと嘲笑することは、誰にも許されていない。