この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
3.42

33件の評価

4.2

4巻まで読みました

すげーって思う作品って、はじめから異彩を放っている。

第一話では、青山霜介の異常なまでの鋭敏な感性が見出されるところから始まる。
こういう天才発見の話はだいたい全部好き。

続く第二話で、突然の新参弟子に千瑛が噛み付いたものの、すぐに
「気に入らないのは私の この未熟さよ」
「冗談じゃない…冗談じゃないのね おじいちゃん」
と、冷静な態度を見せる。

ここがすごいよかった。
好きな作品だ、って思った。
何もない青山の部屋と、切り込むような凛とした空気の千瑛。
切実で、真剣。
そういう人だからこそ持つ、人として優しさ、暖かさを感じた。

これは全体通してだけど、キャラの作り込みに厚みがあるというか、通底する「優しさ」がある。
浅はかキャラに見える小前君だって、友達想いで、他者への尊敬がある人だ。
「ツンデレ(千瑛)」とか「頑固オヤジ(翠山)」「技巧派イケメンエリート(斉藤湖栖)」みたいな”属性”に、この作者なりの「優しさ」「他者を尊重する気持ち」をうまくブレンドすることで、無二の”個性”に昇華している。

そして、やっぱり見応えがあるのは、そんなキャラたちの優しさに触れながら、徐々に描く線を変えていく青山の姿。
青山の描く線は、湖山のこの言葉によってひとつの完成をみる。
「ありのままに生きようとする命ーそれに深く頭を垂れて教えを乞いなさい」

儚く燃える蘭の命に、美しさを見つけ尊ぶ。
それは、自分の命の美しさを見つけることでもある、のかもしれない。

あとこれ小説のコミカライズなんだけど、空気の描きわけがうまくて引きこまれた。
凛とした空気、暗く寂しい空気、命を感じる暖かい空気、等等。

僕のなかでの三大コミカライズ作品は
『孤高の人』『魔王』と、この作品になった。

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