この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
3.70

698件の評価

4.4

9巻まで読みました

このレビューにはネタバレを含みます。

こんな作品を待っていた!
押見さんの画力も来るところまで来て、微妙な表情の妙がたまらなく訴えかけてくる。
ショーではない。イメージをなぞった、分かりやすい毒親では決してない。
本当の気持ち悪さ、得体の知れなさ、ゾクゾクと、何かが湧き上がってくる感覚。
静一はいつまで被害者面していられるかな?

【一巻】
初めの方は、ちょっと過保護な美人ママ。絵柄も相まって不穏な空気は常に付きまとうも、何の事もない日常。それが四話から崩れ始める。そして極めつけは六話。しげるを崖から落とした後の表情には「?」の応酬。何だコイツやべぇ。完全に惹き込まれてしまった。

【二巻】
静子の中身が覗けない。静一の中身もまた同様に。この親子はあまりにも複雑で、自分自身も分かっていないのかもしれない。「捨てていい?」からの怒涛の展開は、もう一種のギャグに近い。ページを捲る手が止まらない。

【三巻】
表情などの絵で表現される人の感情。だからか、本質が見えなくても不思議と感覚として入ってきているように思う。ミステリーではない、ただただ「人」を描いてる。それに気づいた三巻。

【四巻】
らしい恋愛要素がプラスされ出した四巻。静子、静一、吹石の三人それぞれが暴走しそうな予感に震える。

【五巻】
静子と吹石の間で揺れ動く静一。悪だとか間違いだとかからかけ離れている。押見さんはどうなっているのか、嫉妬に身が焼かれる思いです。

【六巻】
静子は覚えているのか、それとも罪悪感から本当に記憶が改ざんされたのか、本格的に分からなくなってきた。
2人の関係もどんどん加速していく。子からすると親は絶対の存在。というか、子供の知る小さな世界の主。そこからみんな旅立っていくけど、静一は捕まってしまった。一種の洗脳に近い感じ。気持ち悪いと感じるのは、自分の普通が彼らの普通じゃないから。

【七巻】
「そうしなければならない」状況を望んでいるのかもしれない。フローチャートで表すことが出来ないだろう精神。各個人の正解が見えない。それがどれだけ凄い事か。こんなもの、どうやって描いてるんだろうか。

【八巻】
タチが悪い方の宗教と同じ、どんどんと静一が侵食されていく。
モノローグがなく、読者に言葉ではなく表情で伝える押見さんの手腕。表情の麻痺が見たことない説得力で迫ってくる。生物としての本来の直感、第六感にも近いものに訴えかけてくるこの作風は大好物。
静一が空っぽになり始めている。ホラー漫画なんて目じゃないくらいに怖い。

【九巻】
物語が大きく展開した。静一が自問自答する。自分の本音と向き合おうと初めて前進した巻。
静一とお母さんの過去も全貌が見えてきて、怖さを増していく。

【10巻】
ママの愛が自己愛によるものだと断定した静一は、今まで大好きだったママを「この世で1番嫌い」だと確信した。
2人の思いのズレが大きな亀裂を生んでしまう。
弁護士も利益で動いている。父親は母親を守ろうと必死だ。
そうして静一は、唯一の拠り所へ逃げる。
もう誰のせいにも出来ない。遂に自分と向き合わなければならない時が来た。
その孤独は、誰といても必ず感じるもの。

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