この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
3.92

217件の評価

4.5

日常系の作品は数多くあるが、この作品はその中でも意欲的であり、試験的であり、実験的であり、挑戦的であり私の中ではかなり新しい風を感じて注目している。まずコマ割りにメリハリが上手い。基本的にサイズの大きいコマに背景を含めて多くの情報量を詰め込み、逆にサイズの小さいコマは背景が空白で情報量を意図的に少なくしている。そしてその大小をバランス良く織り交ぜることでメリハリを出している。次にコマの1つ1つの描き方。まるでスナップショットのような感じで動きのあるシーンもどこか写真的な静的さを感じる。言わば先ほどのコマ割りと合わせてスナップショットの連続で物語が構成されているかのようで非常に新鮮味があった。そして最もこの作品の魅力を引き出しているのが絵である。線の多めの絵ではあるが無駄な線がない。もっと線を少なくして1つの線に膨大な情報量を詰めて描く人もいるが、今作では線をある程度多くすることで全体としての情報量の密度を高めている。それゆえにその場面場面での状況だけでなく感情や空気感みたいなものまでしっかり伝わってくる。これは日常系の作品としては非常に重要な要素だと思っている。この作品はまるでアルバムを眺めているかのようだ。過ぎ去った過去をみているのに、確かにそこに時間が流れている。私が時々自分の青春時代を思い出すような感覚と同じものをこの作品を読んでいて感じる。日常というのは少なくとも未来ではないし、現在でもない。時間軸的には恐らく過去だろう。過去は結構曖昧で思い出しても本当にそうだったのか?と疑問に感じることがある。しかしこの作品は上記した要素を詰め込むことで過去に確実性を持たせている。安直に言えばリアリティだろうか。だからたぶん自分が経験した青春自体も嘘ではなく本当のものなのだろう。完全なSF作品と違いこういった日常系は現実世界との境界が薄い。それでも漫画としての嘘は多くある。そんな中でもこの作品は最初に書いたように意欲的に現実世界との境界を破ろうとしていると感じた。最後に。私が日頃読む本のほとんどは哲学書である。そんな私がこの作品を自分なりの視点で感想を書いてみた。その点だけ了承願いたい。

4.5

6巻まで読みました

とっても絵が上手、まず絵の話からになりますが、ゆめくり時代に見せたアニメタッチから様々タッチを試し、ゆめくり最終巻でみせた柔らかくのびのびとしたタッチで描かれた作品、そのタッチは動きまわる明日ちゃんにとっても似合っています。
話としては学校内がメインと描かれていて、最初明日ちゃんが初めて合う個性的な友達たちと仲良くなり、友達と親睦を深め様々なシチュエーションで楽しそうにするところが小さな仕草まで詳細に描かれれています。
3,4巻では体育祭にむけた準備のなか正直になれない、思い切りの足りないそんなクラスメイトを元気いっぱいな姿を見せ引っ張っていったり引っ張られたり、ここで良いのはあまり無理に引っ張ったりせずクラスメイト自らに気づかせていくところ。そして4巻でみせるダイジェストでの様々な体育祭のシーンやダンスのシーンは躍動感があり、セリフが少ないものの伝わる良さがあります。後半で見せる龍守さんと明日ちゃんの妹の話は、可愛くかつ魅力あるデフォルメや表情、効果、演出が満載で大好きです。
5巻では、明日ちゃんの家族の話を掘り下げる話で、話の内容としては、シンプルですが密度が非常に濃く明日ちゃんの感情が顕になる様な回想などあり、次巻の兎原さんの家族の話への良い流れにはなっていると思います。
第6巻ではみんなと東京に行くお話、4,5巻お話が少なかったですが今回は絵も話もぎっしり、
新幹線での龍守さんの心境が描かれ、眼鏡を生かした演出が新鮮で効果的です。みんなと合流した後は、兎原さんがメインの話となり昔の話や、お調子者で隠れていた素が見れたり、場面に合わせた髪の表現が心境の変化を良く伝えてくれます。
最後に描かれた「大熊実の観察」では個性的な大熊さん描かれていて、アップの大コマがまるで実際にそこにあるような、引き込まれる魅力があり見やすく面白いです。
本編に沿った龍守さんの様子や、ムードメイカー的立ち回りだった兎原さんのかわいい一面も見れる良い本です。
ここまでで強いて言うとすれば、4巻前半や5巻ではセリフが少ないため見て楽しむことはできるのですが少し疲れてしまうので、そのあたり少し発見がありました。
5巻からはゆめくり2巻のお祭りの話で見せたような優しいタッチも生かされてきてとても良く、レイアウトも定番から少し外れつつもどんどん良いものになってきて本当に凄いです。

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