五十嵐大介さんの作品の書影

五十嵐大介

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311

5.0

5巻まで読みました

圧倒的バイオサイエンスフィクション。
遺伝子学による人工的遺伝子組み替え・設計によってヒトの姿を獲得した動物、ヒューマナイズド・アニマル(HA)が戦争兵器として駆り出される世界が舞台。
板垣巴留先生の『BEASTARS』とは似て非なる真逆のものです。

五十嵐先生の素晴らしい筆致による動物たちの環世界(全ての生物は各々の感覚器官を用いて世界を知覚しているという生物学用語)、映画のような華麗なコマの間の取り方。
セリフがない絵だけのページでも、情報量が凄いです。もはや絵がセリフ(?)
主人公のカエルのHAとイルカのHAたちの戦闘や内面描写を通して、動物の環世界を想像できますが、その描写が秀逸。(もちろんヒトには知ることはできません)
がしかし、彼らを創った科学者、オクダの環世界はもっとすごい。もはやホラーでした。

本作には明確な「悪」はなく、正しいものもありません。
その中で、最終巻でのオクダの台詞
「病は生物の隠された可能性の発現だ」
は凄く印象に残りました。そして、
「今の環境では病でも、条件が変われば生存に有利な特性となり得る」
と続きます。
つまり、いま自分が置かれている状況は主観的に辛くても状況が変わればそれは武器にもなる。
チャップリンの名言「人生はクローズアップで見ると悲劇、ロングショットで見ると喜劇」に少し通ずるものがあります。

物凄く深く、考えさせられました。名作。

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