レーダーには映らない、小さく、深き、絶海の森。 そこには、退屈で無慈悲な仕事を一時(いっとき)忘れ、大切だった「何か」を思い出させてくれる温かい有機物が存在した。 座標もわからないそこにたどり着くためには、久しく硝煙と海風しか感じてこなかった我が嗅覚の奥にある懐かしい感覚を呼び戻し、自分に正直になることが、なぜか一番の道標(みちしるべ)だった。 しかし、そのどこかに置いていったはずの生身の記憶の断片が、この世界の、この國のゆく先に大きな揺らぎをもたらすとは知らずに‥‥。
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