大人の恋の始まる瞬間
『恋の中』『その気持ちに名前をつける』と、さかのぼって読んできて、やっぱりこの作家さんは心を読ませるのが上手い!
しかも、これがデビュー単行本だというから、それを加味しても素晴らしいと思います!
どれも短編なんですが、多分登場人物に付随するストーリーは沢山あるんでしょうが、その二人がもしくは片側が、恋を意識する、恋に堕ちる瞬間というのを、うまーく捉え抜き出して、短いページで見せていることが見事なんです。
そこには無駄なストーリーも解説も一切なくて、ただ的確に胸をキュンと掴む瞬間を見せるのです。
エチもエロもほとんどなくて薄いのに、この胸のトキメキは大人のものだと思います!!
後輩の告白に意識しだし、その仕事の実直さにどんどんトキメイて確信になる先輩社員の心。
年齢差から越えられなかった壁を、距離を、二時間もかかる距離を走りとおした真摯な気持ちに再確認する愛情。
友情が愛情に変わる時
腐れ縁もまた愛の形
過去があるから今の幸せな自分があるんだよ、という話
一番切ない、相手を守る為の逃避行
真夜中のバイトで二人きり、その限られた短時間で変わっていくノンケ青年の心。
この数々の形がそれぞれに色を持ち、くるくる回って自分を魅了する。
大人の女性に是非見てもらいたい、あったかいトキメキの一冊だと思います。【This item is excerpted from "http://www.chil-chil.net/top/". 】