花田留吉七転八倒

秋本治

3.07

328

既刊1巻

『花田留吉七転八倒(1)』巻の書影
うにたべたいさんが読んでいます

この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
3.07

1件の評価

3.9

1巻まで読みました

秋本治の短編集。1996年初版発行。
タイミングとしては、こち亀100巻の発売一月前となりますが、収録作は新旧入り乱れており、古いものでは1978年の作品が収録されているので、ページによって絵柄がぜんぜん違うようになっています。
秋本治の1978年から1994年までの絵柄、及びネタの変遷を一冊で楽しめる短編集ともいえると思います。

収録作は以下の4作。
ただし、花田留吉七転八倒は4作の短編シリーズ、鷹が飛ぶは前後編となっています。

・花田留吉七転八倒
短編集「こちら人情民生課」収録の同タイトル作品と同じ主人公による中短編。
一話完結の短編作品4作収録されています。
基本的には強面のヤクザが、何かしらに感化されて、気質の仕事につき、なんだかんだでヤクザに戻るという「こちら人情民生課」と同じフォーマットとなっています(1作を除く)。
だいぶ今の絵柄に近づいた頃の作品で、ネタもこち亀ライクで普通におもしろいです。

・鷹が飛ぶ
前後編になっています。
巨大な複合企業の総帥が死に、遺産がすべて、野生児のような生活をおくる鷹士のもとに転がり込む。
突然巨大企業の新会長の座についた鷹士が、会社を引き継いで成長する話。
本作も最近の絵柄ですが、直前までなぜ自分が?となっていたのに、数ページ後には特に説明もなく、「一生をかけられる夢がこの仕事」と言っており、唐突かつ不自然さが感じられる点がマイナスです。
ただ、話の作りは秋本治らしい破天荒なものになっていて、爽快感のある内容になっています。

・ひまつぶし探偵団
本作で絵柄がガラッと変わります。
とある貧乏な探偵事務所に人探しの依頼が入る。成功報酬はなんと1000万円。
仕事がなさすぎて散り散りになっていた探偵団は、一致団結して尋ね人を探すという話。
強盗犯が顔も隠さずに街を普通に歩いているなど読んでて妙に感じることろはあるのですが、そこはギャグ漫画ということで、気にしない方向けの作品だと思います。
街中で銃撃戦をする、目的のため消火活動中の消防車を強奪するなど、古い作品ですが安定したストーリー展開となっています。

・クリスマス・キャンドル
バイク好きの青年とお嬢様のクリスマスの夜の話。
他の作品とは違い、人情に訴えるものや破天荒なギャグマンガではなく、若者通しの淡い恋物語を扱った秋本治には珍しい作品です。
下町を舞台として、丁寧な情景描写がされており、恋愛を題材にして萌えに走らず、とはいえ女の子は可愛く描かれている、今の作家には描くのが難しい内容になっています。
隠れた名作と言える作品だと思います。

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