刑務所の中って一体どうなっているのだろう。 <br> 独房の構造は、クサい飯とは、実際どんなものなのか。トイレはどうしているのか。看守は? 囚人同士の関係は? <p> 現役漫画家である著者が、記憶をたよりに細密な絵で描く『刑務所の中』は、そんな単なるヤジ馬的好奇心を満たしてくれるばかりではなく、狭い閉ざされた空間でヒトはいったい何を思い、どんなことに楽しみを見出して過ごそうとするものなのか(「マーガリンつきのパン食」のエピソードは必見)、しみじみと教えてくれる秀作である。 <p> 巻頭にはマンガ評論家の阿部幸弘らとの対談を収録。著者が3年の懲役を受けるに至った経緯が、自戒の念を込めて語られている。あとがきでは呉智英が著者の才能が潰れることがないようにと念じながら獄中の著者と手紙のやり取りをしていたエピソードを披露している。 <p> 獄中の著者が「一日が過ぎるのがものすごく早い」と独白しているが、四六時中監視されながら複数の人間が閉じ込められている「緊迫」と、生活のすべてが看守の号令のもと受身に過ぎていく「弛緩」に、読んでいるほうもあっという間に引きずりこまれて、しばらく抜け出せなくなるのでご用心あれ。(福山紫乃)
濃密で因業で時に清浄な、繰り返し味わいたい世界観。各話少ないページ数、なのに素晴らしい読み応えと満足感。「これぞ花輪和一」と断言できる1冊です。――高橋留美子氏、感激!耽美でグロテスクな作風と、大胆かつ緻密な作画で熱狂的な支持を得る孤高の漫画家・花輪和一のエッセンスを凝縮した濃密作品集!末法の世に蔓延る、怒り、恨み、妬み、嫉み、裏切り――。決して拭い去れない人間の情念を描く、唯一無二の世界をご賞味あれ。2014年に刊行した『呪詛』に10篇もの未収録作を加えた完全版として、怪談専門誌「幽」で15年間にわたって掲載された作品の数々を一挙掲載。煩悩にまみれた人々の浮かばれぬ魂を救済する、現代の福音書!書き下ろし絵物語「日没」を含む、33作品を収録。