「ママに会いたい!空を飛びたい!」雲の上にある、空飛ぶウサギの国・ネザーランド。飛べないウサギのプッチは行方不明のママを探すため、健気に練習に励むけどなかなか飛ぶことができません。かわいそうなプッチは今日もひとり、つらい現実から目を背けるため、エアクッションをプチプチプチプチプチプチプチ……。ギャグ漫画家おおひなたごうが初めて少女漫画誌に連載した隠れた名作が、大量の未収録作品と感動のフィナーレを収録した完全版として、ここに待望の新生!さらに特別収録!月刊コミックビーム掲載の、プッチ誕生の秘話に迫る番外編「エピソードゼロ」と、完全版への思いを綴ったあとがきを収録。※作品の表現や演出を考慮して、電子版は一部のページを改変しております。※
ギャグ漫画「バニラの招待状」(93年~94年「グランドチャンピオン」連載)、「この素晴らしき世界」(93年「コミックスコラ」連載)の2冊をまとめた『カステラショック』が発売されたのが1997年。その後出版元を変え、2001年に復刻版として発売されたのが本書である。表紙をはがすとなぜか装丁デザイナーの姿が現れるという妙案にも、作家のギャグ心が感じられる。 <p> 「あとがき」によれば著者は駄洒落ネタが多い「この素晴らしき世界」があまり好きではないらしい。だが、「バニラの招待状」でもヘタウマ系の絵と駄洒落ネタの組み合わせは健在であり、この作家の本質は案外ここにあるのかもしれない。 <p> 本書に収録された4コマに次のような作品がある。タイトルは「真剣勝負」。向き合うふたりの侍。侍Aは刀を構え真剣そのもの。だが侍Bは刀も持たず両手をあげてヘラヘラしている。怒ったAが「真面目にやれっ」と斬りつけると、Bはその切っ先を真剣白刃取り。同時に「ふまじめ白刃取り!」と叫んでこれがオチとなる。 <p> 「ハズした笑い」好きにはたまらない1冊である。(中山来太郎)
爆笑問題とおおひなたごうのコラボレーション、というよりはむしろ、爆笑問題をマテリアルとしたおおひなたごうのギャグ漫画。爆笑問題の漫画だから「バクマン」。そのまんまなので、実にツッコミを入れやすいタイトルである。 <p> 2002年現在、太田光と田中裕二の凸凹コンビ、爆笑問題のキャッチーかつマニアックなイメージは、テレビやラジオを通じてすっかりお茶の間に定着したといえるだろう。この、すでに幅広い層に浸透しているキャラクターイメージを損なわずに、巧みに増幅させるおおひなたのキャラいじりは見事としか言いようがない。本書の中でも特に「太田のしゅみ・田中のしゅみ」は、太田の真顔でふざけたことを口にするボケの感じや、田中の身振りや表情が的確に再現にされており、爆笑もの。2人の趣味は何か提示するところから展開されるネタの流れの中で、ボケとツッコミというそれぞれの役割をきちんと引き立たせる、おおひなたの粋な演出がまたすばらしい。 <p> お笑いの大きな魅力のひとつに、どこまで本気でどこまで冗談かわからない掛け合いの生み出すきわどいスピード感があるだろう。出だしで、実録もの?と思わせておいて、どんどんテンポよく暴走する本書にはその魅力が詰まっている。一連の「バクマン」以外に「爆笑問題・バンド日記」や、太田光原作のSF怪作「夢」の漫画版なども収録されており、2つの異なるお笑いの親和性のある接近遭遇を楽しめる。(横山雅啓)