「あの決定的な敗戦から数十年」、第二次世界大戦の戦敗国・日本。戦勝国・ドイツによる占領統治下の混迷からようやく抜け出し、国際社会への復帰のために強行された経済政策は、失業者と凶悪犯罪の増加、また、セクトと呼ばれる過激派集団の形成を促し、本来それらに対応するはずの自治体警察の能力を超えた武装闘争が、深刻な社会問題と化していた。 政府は、国家警察への昇格を目論む自治警を牽制し、同時に自衛隊の治安出動を回避するため、高い戦闘力を持つ警察機関(いわゆる警察軍)として「首都圏治安警察機構」、通称「首都警」を組織した。セクトとの武力闘争の中で首都警は重武装化の道をひた走り、中でもドイツが戦時中に使用した動甲冑「プロテクトギア」に身を固め、MG34などの重火器で武装した首都警警備部特機隊、通称「ケルベロス」の名は犯罪者やテロリスト達を震え上がらせた。 しかし、行き過ぎた武装化は国民の反発や自治警・公安部などとの軋轢を招き、特機隊は次第に孤立を深めていく。そして、歴史は彼らに重要かつ最終的な役割を与える事となった…。
藤原カムイファンにとってまずうれしいのは、「過去のイラストやデザイン素材をかき集めた」その圧倒的な「画」の分量である。タイトルが、画像データの総量を表す「40GB」(40ギガバイト)として出版されたのもうなずける。 <p> 藤原カムイの名が世に広く知られることになったのは、おそらく1983年に刊行された初の単行本『DE JA VU』だろうが、それ以降の名だたる作品はもちろんのこと、高校の漫画研究部で描いた作品、ゲームのキャラクター設定、パッケージイラスト、各作品での下書きや落書き、ボツ企画などこれまで世に出ることのなかった「画」が1960年、70年、75年…と、時系列で整理されている。巻末には、年代別に初出の作品リストがまとめられている。 <p> 『藤原カムイ画集40GB sideA』『藤原カムイ画集40GB sideB』の2巻構成からなる画集のうち、「sideB」では、1989年から2000年までと年代不明の作品を収録。漫画家として世に出た著者がさまざまなメディアへと活躍の場を広げていく様を追うことができる作品集となっている。(中野裕幸)