この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
4.10

812件の評価

4.4

9巻まで読みました

このレビューにはネタバレを含みます。

エグいとは聞いてはいたが想像していたよりも遥かに惨い展開が待っている作品
可愛らしい絵柄とそれらのショッキングさのギャップやグロテスク・バイオレンスがこの漫画の本質というわけではなく、ファンタジーの世界とその成り立ちや仕組みに裏付けされた類を見ない切なさと悲しさがハマる要因であり、頭を抱えさせるこの作品の魅力的な部分なのだと思います。
ただただ登場人物たちを可哀想なシチュエーションに落とし込み同情を誘うような悪戯なB級作品とは違い、探求者の狂気とも言える信念や、孤独と密接する愛情をこの作品は丁寧に描写し、それを基に凄惨な方向へと物語が進むから説得力が段違いであるし、爪痕を残してやろうという意識をせずに心を抉り取るようなインパクトを自然に与えられるのは、舞台設定が濃密であり、かつ流れるように綺麗にストーリーが構成されているから可能なのだと
さらにこれはメタ的感想ではあるが、物語や登場人物の狂気だけでなく、至る所に作者の性癖が色濃く反映されているためか、その作者の狂気と異質な思考回路が垣間見えるのも、このこだわりの世界に没入させる要因なのかもしれないです。

さらにこの漫画の凄いところは哲学や倫理的もしくは芸術的で近寄り難い作品というわけではなく、あくまで冒険活劇として完成されているところであり、ファンタジー設定や人物の心情がわかりやすく表現されていること、真っ直ぐな主人公たち感情や正義感のある行動が、純粋な面白さにも繋がっているのだと感じます。
細かい点で言うと、我々には未知である上昇負荷の演出や、狂信的にアビスを目指してしまう探窟家の心理、人道に反した扱いを受けるモノの無惨さなど、ファンタジーだからこその表現を読者が受け取りやすく成り立たせているのはお見事としか言いようがない。
そして重厚なファンタジー作品であるのに、キャッチーなキャラクター作りと圧倒的画力がよりこの作品を良質なエンターテイメントに仕立て上げているだと思います。

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