1巻
1968年から75年にかけての赤塚不二夫の仕事を1冊にまとめたスクラップブック。「少年マガジン」の『天才バカボン』(1967年連載開始)と「少年サンデー」の『レッツラゴン』(1971年連載開始)を中心に赤塚漫画を抜粋、「週刊文春」などの雑誌記事も織りまぜ、多角的な視点で赤塚の隆盛期を再現。漫画雑誌と同じ判型、コマの余白のクイズや雑学情報、広告も当時のままに掲載するという大胆な手法で、赤塚の圧倒的なパワーを見事によみがえらせている。 <p> ページをめくれば、バカボンパパ、目ン玉つながりのおまわりさん、ウナギイヌ、ゴン、ベラマッチャが、不条理ギャグ、オカマギャグ、暴力ネタ、下ネタと、少年誌とは思えない過激さで暴れまくる。中でも、本書の構成者が特に再現したかったと語る、見開きいっぱいにバカボンパパ、続いてバカボンのアップのみというページは最高にクダラナイ。自らをギャグにしてしまった「山田一郎」改名事件にいたっては、そのバカバカしさにうなるしかない。 <p> 本書の影の主役は、そんな赤塚を支えてきた当時の編集者たちだ。主人公そっちのけで、赤塚と編集者との楽屋話を描いた『レッツラゴン』。完成前の下絵を堂々と掲載するといったハチャメチャぶりが際立った『天才バカボン』。赤塚漫画のナンセンスさを楽しんでいる、漫画雑誌の作り手たちの「勢い」が実に小気味いい。古き良き漫画の一時代を凝縮した本書は、赤塚漫画に触れたことのない若い読者にも新鮮な驚きを与えるに違いない。(中島正敏)