ソラリス

3.08

(1件)

発刊:2025.01.22 〜

既刊2巻

『ソラリス(1)』巻の書影
『ソラリス(2)』巻の書影
山形さんが読んでいます

この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
3.08

1件の評価

4.0

2巻まで読みました

この物語は2つの軸で進行します。1つは惑星ソラリスに存在するプラズマ状の「海」との接触。2つめは「海」がステーションに送り込んできた"ゲスト"と呼ばれるものとの対話です。

海は眠っている間に人間の記憶の痕跡を探り、未解決の隠された葛藤を実体化し、送り込みます。

主人公の"ゲスト"であるハリーも彼の隠された記憶の断片が再構成されたものであり、彼らは否応なく未解決の葛藤という自らの意識に直面させられます。

再生したハリーは彼自身の後悔や良心を形象化したものであり、彼を常に責め苛み、強制的に葛藤を想起させる存在に他なりません。

惑星ソラリスでの「海」との接触は、結果として人間自身の内なる未知との出会いを齎すことになりました。ソラリスという未知を研究してきた人類は、自らの内面に存在する未知と遭遇することなった、というのがこの作品の序盤の展開となります。

そして、複製のハリーは自己犠牲という形で主人公への変わらぬ愛を貫くことになります。複製体はソラリスでしか存在することができないため、2人で一緒に暮らすということは主人公が故郷に帰ることができずに、一生良心の呵責に苦しみ続けるということを意味します。
悔恨と郷愁の狭間で苦悩し葛藤する主人公を理解した複製のハリーは自ら進んで永久に姿を消すことを決意しました。

ここまでの物語から複製のハリーは自己のアイデンティティ危機に直面し、主人公も同様にアイデンティティ危機に直面することがわかります。そもそも複製のハリーは主人公の記憶を投影された鏡像だったということがここで思い出されるという流れです。

そして物語終盤に主人公は同僚のスナウトと惑星ソラリスと神についての議論を交わします。
2人が惑星ソラリスについて結論付けたことを考えると、愛や赦しが人間にとって何ものにも代え難い貴重な価値であるとしても、宇宙はそれに無関心であり、人間の理性では捉え難い絶対的な他者として存在しているということです。

人間らしさの本質にこだわりつつ、自己の意識と向き合わされた人間の内なる旅を描いた作品でした。楽しかったです。

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