2019年02月23日発売
1巻
○◎正気の沙汰かと疑った「ホビロビ」の単行本化◎○いまや押しも推されぬ一流造形師の榎木ともひでが描き模型雑誌の海洋堂広告にひっそりと掲載していた連載漫画「ホビロビ」。ホビーロビー大阪とホビーロビー東京のマスコットキャラが登場する物語。知名度ほぼほぼゼロ、幻の漫画「ホビロビ」ついに刊行。 ぶっちゃけて言えば、榎木の造形には期待していたが、漫画家としての才能には、別に期待はしてなかった。だから、内容がいくら内輪受けに走ろうとも、読者無視でも、気にせず放っておいた。ワンダーフェスティバルの準備で忙しくなると(榎木は、自分のブースを持って、オリジナル製品を販売している)、前号の画をそのまま使ってセリフだけを変えるという、ひどい手抜きを、性懲りもなく何度も行っているが、それも特に咎めることなくスルーしていた。 それどころか「描く時間がもったいないから、「ホビロビ」なんか早く辞めようや」と常に言い続けていたぐらいだ。しょせん酔狂で始まった企画であり、いつ飽きてやめてもかまわなかったし、それを隠しもしなかった。実際、読者や同業者からの反応は、ほぼゼロであった。にもかかわらず、誰も期待しちゃいない連載を、12年も続けた榎木のモチベーションが、いったい何に起因するのか、僕にもよくわからない。しかもそれを、単行本にしようという話を聞いたときには(失礼ながら)正気の沙汰かと疑ったものだ。 しかし、まとまった『ホビロビ』を読んで、内容ゼロだと思っていたこの漫画に、僕と榎木が延々と語ったり、愚痴ったり、議論した、造形家のプライド、作り手と受け取る側の意識の差、版権ものを作る葛藤、オタク意識の変遷への嘆き、造形物の地位向上への絶望感などの、ドロドロとした思いが、あちこちに表出しているのが見えて驚いた。 榎木のことを知らない読者が、この舌っ足らずな漫画を一読して、それを汲み取ることは困難だろうし、手がかりもそう多くはない。だが、この漫画を味わって、なにかザラザラした澱が舌に残ったとしたら、おそらくその毒の苦味を感じたのだと思う。 漫画に現れた毒成分のすべてを説明していたら、分厚い本が一冊できてしまう。以下に作品解説の名を借りて、ほんの少しだけ、そのさわりに触れてみたい。「ホビロビ解説」白井武志 本文より目次:01:ホビロビ1話から132話 漫画・榎木ともひで02:ホビロビ解説 文・白井武志03:海洋堂店舗の変遷 文・宮脇修一04:漫画道と造形の狭間で 文・榎木ともひで05:ネイティブサブマリンズ 漫画・榎木ともひで06:山口プラム 造形・榎木ともひで07:ホビロビ「大森店長篇」 漫画・榎木ともひで08:榎木ともひで プロフィール榎木ともひで●1974年12月14日生まれ。和歌山県出身。1998年より造形家として活動を開始する。高校時代はマンガ家を志していたが、専門学校卒業後、造形師の道を歩む。2000年に同志大嶋優木とワンフェスディーラー〈eyewater〉を結成。男臭いバイオレンスものから女性好みの児童文学まで、また可動フィギュアから高密度ヴィネットまで、あらゆるジャンルのアイテムを魅力たっぷりに、造型物として破綻無く再現する圧倒的技術力とセンスは、業界内でも比肩するものがない。代表作に「ムーミン、ミニヴィネットシリーズ」「サイボーグ009、エフェクトヴィネット」「クレヨンしんちゃん、パノラマヴィネット」「リボルテックダンボー」「ポケモンフィギュア」などがある。
フィギュアの原型師が「目を造形するときに考えていること」が目からウロコ 「めちゃくちゃ分かりやすい」「これこそノウハウ」
しわしわ! 「名探偵ピカチュウ」のピカチュウをプロ造形師さんが粘土で完全再現