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リンゴ好きなパンダ
4.5
日常系の作品は数多くあるが、この作品はその中でも意欲的であり、試験的であり、実験的であり、挑戦的であり私の中ではかなり新しい風を感じて注目している。まずコマ割りにメリハリが上手い。基本的にサイズの大きいコマに背景を含めて多くの情報量を詰め込み、逆にサイズの小さいコマは背景が空白で情報量を意図的に少なくしている。そしてその大小をバランス良く織り交ぜることでメリハリを出している。次にコマの1つ1つの描き方。まるでスナップショットのような感じで動きのあるシーンもどこか写真的な静的さを感じる。言わば先ほどのコマ割りと合わせてスナップショットの連続で物語が構成されているかのようで非常に新鮮味があった。そして最もこの作品の魅力を引き出しているのが絵である。線の多めの絵ではあるが無駄な線がない。もっと線を少なくして1つの線に膨大な情報量を詰めて描く人もいるが、今作では線をある程度多くすることで全体としての情報量の密度を高めている。それゆえにその場面場面での状況だけでなく感情や空気感みたいなものまでしっかり伝わってくる。これは日常系の作品としては非常に重要な要素だと思っている。この作品はまるでアルバムを眺めているかのようだ。過ぎ去った過去をみているのに、確かにそこに時間が流れている。私が時々自分の青春時代を思い出すような感覚と同じものをこの作品を読んでいて感じる。日常というのは少なくとも未来ではないし、現在でもない。時間軸的には恐らく過去だろう。過去は結構曖昧で思い出しても本当にそうだったのか?と疑問に感じることがある。しかしこの作品は上記した要素を詰め込むことで過去に確実性を持たせている。安直に言えばリアリティだろうか。だからたぶん自分が経験した青春自体も嘘ではなく本当のものなのだろう。完全なSF作品と違いこういった日常系は現実世界との境界が薄い。それでも漫画としての嘘は多くある。そんな中でもこの作品は最初に書いたように意欲的に現実世界との境界を破ろうとしていると感じた。最後に。私が日頃読む本のほとんどは哲学書である。そんな私がこの作品を自分なりの視点で感想を書いてみた。その点だけ了承願いたい。
明日ちゃんのセーラー服
レビュー(217)件
既刊14巻
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