ムーティ さんのレビュー

15

4.5

11巻まで読みました

このレビューにはネタバレを含みます。

百合漫画には詳しくなかったのですが、アニメをキッカケに既刊を全巻読破。めちゃくちゃ面白い。

当初はきらら系の日常系アニメと同じようなテンションで見始めたのですが、その本質は可愛い絵柄に彩られた人間ドラマだった。
本当の自分の気持ちとは何なのか、それは自分が他人に見せたい像とどう違うのか、その理想と現実の折り合いをどう付けていくのか、という人間関係の根源的な話を中心として、「この先の関係性はどうなっていくんだ」という所で興味を持続させ続ける手腕が凄すぎる。

自分が男性だから余計にそう感じるのかもしれないですが、「こういうことを経て、こうなったから、今こう思っている」という各キャラクターの心情表現が、感情的でありながらも非常にロジカルに描かれていることが印象的でした。(うまく表現出来ないですが)
8巻の陽芽の心理描写などは特に迫真すぎて見てるこっちがヒヤヒヤしっぱなしだった…

現在アニメ化されている範囲だと、果乃子のみが俗に言う「ヤンデレ」的属性であり、平和な関係性を破壊する悪のように見えますが、違うんだよなと。
思春期の歳頃で、しかも、陽芽を除く皆が皆(社会的な地位は向上しつつあるものの、作中で描かれているように現代における扱いのアブノーマルさは未だ拭いきれていない)同性愛的趣向を根底に宿している。そんなモラトリアムにある彼女らが、──「若気の至り」とは安っぽい表現ですが──ともかく過ちやすれ違いを経て、相手を真に思いやることで、傷付きながらも少しでも前向きに生きていこうと足掻く姿。それは美しいものです。

ただ、いくつかのレビューでも言われているように本当に感情が摩耗する。温泉回みたいな「章と章との間の箸休めの日常回」がもっともっとあってもいいのではないかとはずっと思いました。心が持たないよ!!!!

全て円満に解決したら、丸々一巻分ぐらいただ平和な日々を描いてから完結して欲しいですね。純加と果乃子の関係性が一段落ついたら、いよいよ陽芽が「本当の弱さを見せる」ターンが来るのでしょうか。しかし彼女は既にそれを(読者を含めた)皆にさらけ出すことが出来ているとも言えて、それが彼女の卓越した精神的な強さだとも思うのですが、ともかく続きが楽しみすぎます。

私の百合はお仕事です!

レビュー(39)件

既刊11巻

4.7

8巻まで読みました

このレビューにはネタバレを含みます。

チェンソーマンを読んでからずっと読みたいと思っていて、この度一気読みをしたがかなり良かった。

セカイ系らしく加速度的に描写が曖昧になっていくけど「人はなりたい自分になってしまう」「人は何かを糧にしないと生きられない」という話が終始物語の根幹にあるように感じられて、だからこそ物語の中心としてそれまで何かを背負い続けてきた2人(アグニとユダ)がその役割から開放されるという終わり方からはカタルシスと一抹の(人間という生き物の中にある)希望を感じられてとても良かった。
最後に残るのが原初であるところの「太陽と月」というのもまた良い演出というか示唆で、徐々に「良さ」が染み入ってくる読後感に繋がっていると思った。
しがらみや憎しみを捨てて、ただの人と人同士で向き合うことの尊さというのはチェンソーマン一部のラスト(デンジとナユタ)に共通するメッセージ性なのかもしれないとも感じた。

作者の癖が出まくっているトガタの活躍やセリフ回しも含めて、節々の演出や掛け合いも物語を彩っていてとても良かった。「死んだ後には映画館に行く」のやり取りはこの漫画を読み終えた誰もにとって強く印象に残るのではないだろうか。

ファイアパンチ

レビュー(915)件

完結・全8巻

Loading ...