粕谷秀夫

縁は異なもの味なもの。いつの時代も男と女が結ばれるところには理屈では説明できない不思議な磁場が生じるもの。からくり人形に処女を捧げる娘。女しか住まない島。神のお告げ通りに祝言を挙げる里。秘境の宿で狐狸に化かされる若旦那。秘密裏に寺社の地下で開催される女子格闘興行。くノ一を潜入させるために夜這いの風習を利用する根来衆……。官能時代劇の旗手が挑む異色短編シリーズ、待望の第一集。

義理の親子でありながら男女の仲の孫六と加津。それをとりまく長屋の面々と好色な日々が続いていたが、孫六を援助している豪商・岩田屋弥平が暗殺者に襲われるなど、その周辺は穏やかではなくなってきて……

淫靡で神秘なオトナの幻想時代劇！　抗うことができぬ強烈な情欲で互いを求め合う二人が、火花を飛び散らせんばかりに激しく肉体をぶつかり合わせて描く愛の曼荼羅。陰湿ないじめがはびこる女牢。美しすぎる天女と結ばれた遊び人。漂流し巨人の島に流れ着いた奉公娘。乱暴な夫から逃れたいよろめき妻。狂気の蘭学者の手で蘇る賊徒の頭目。…そしてすべての肉欲は計り知れない巨大な渦となり輝く星となる！　繊細でありながらも豪快なうねりで、異界へといざなう妖しく美しい異色時代劇短編集、堂々の完結。