アザコは十ほどの子供にしか見えなかった。けれども、貧しい漁村に生まれてから二十年を生きていた。穢れを知らぬ生娘のように見えたが、アザコは男であり、とっくに父親に穢されていた。父に捨てられたアザコは山中を彷徨い不思議な爺と出会う。そこは人の世に戻れぬ者が流亡の末に辿りつく鬼常叢。間引かれた赤子、棄てられた年寄り、不幸な福助、何かの足りぬ者、何かの多い者、憑かれた者、患った者が流れ着き、鬼となる。鬼、それは人が変化したもの、人の名残を残した異形。やがてアザコは爺の後を継ぎ、鬼のための提灯を作るようになる。子供の身体全てを材料とし、鬼の足元を照らしてその姿を隠す「童提灯」を…。