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背川昇
3.38
1940
新刊通知
発刊:2018.02.23 〜
完結・全2巻
16件の評価
鈴木
5.0
女子高生青春フリースタイルラップ物語。大傑作。旬ネタ的な、手法先行な、そういうことじゃなくて、軸に語りたい物語があって、口に出せずにいた言葉があって、だからラップがラップとして響いてる。『ショート・ターム12』って映画観たことありますか?心に傷を抱えた少年少女たちが寄り添って暮らすグループホームの話で、その中の黒人青年が、頑なに自分のことを語らないんだけど、職員の青年にコンガを渡して「こうやって叩いて」と頼むと、ビートに乗せて誰にも言えなかった自分の傷について語り始める。それは「僕はここにいる」っていう静かな絶叫であって。声を奪われたものの叫びであって。『ブラインドスポッティング』然り、映画の中で言語として使われるものばかり見てるからかもしれないけど、ラップってそういうものだと思ってて。この『キャッチャー・イン・ザ・ライム』というマンガの中で歌われる言葉はまさにそれで。そうビートは鳴ってなくても気づく、吹き出し飛び出して叙事詩を紡ぐ、コマからコマへ織りなすリズム、等間隔四つ積んだ四角形を崩してく。いや言いたいのはそんな事でもなくて。素晴らしい美しいばかりじゃない、世界は砂の海で宝石はほんの一握りだ。寂しさや悲しさや痛みは消えないまま。でもここでは「素晴らしい」って言いたいし「美しい」ものを見つけたい。それは叫びだ。心ここからそこへ繋ぐ祈りだ。言わなかった言葉のその先も知りたいから。ひそめく秘密めいた美をひとつなぎにしていく。キャッチャー・イン・ザ・ライム、辛い暗い思いは消えないけど、韻踏めばちょっとしたアンセムが生まれる。抱えた葛藤、いつか掴み損ねたその手も、押し殺した心の声を音にして。綱渡りの青春は手を繋いで渡る、落ちそうなときには必ず掴む、けして褪せない景色眺む。卑屈になりそうな時本を開く、沈む心を言葉で射抜く。いくつも流した涙の雫、そこを超えたからこその至福。キャッチャー・インザ・ライム、放課後は屋上で手取り合って踊ろうか、机に伏せてやり過ごすのが人生じゃないから。卑屈になった時誰かが気付く、沈む心を言葉で射抜く。いくつも流した涙の雫。そこを超えたからこその宝だ。ここでいつか必ずまた会おう、だから。キャッチャー・イン・ザ・ライム。キャッチャー、イン・ザ・ライム。
Shungo Kasuga
スピリッツ
いづき
3.5
小ネタ四コマ的ノリの作品かと思いきや、思いのほか骨太なキャラクター描写で驚いた。トラウマやコンプレックスをラップによって克服していくのは、「心が叫びたがってるんだ」にも通ずるものがある。イロモノに見せかけて、極めて真っ当な青春ものになっている。一方で、この作品に限ったことでないけれど、紙面だと音楽やリズムを感じ取れないのが辛いところ。韻が掛かっているところを太字にするなど工夫は感じられるので、読み手の慣れもあるのかも。
あ!
4.0
この漫画は2話以降が本番。ゆるめの雰囲気と見せかけて、登場人物がみんな闇を背負っているということが徐々にわかってくるのだ。だからこそ、彼女達はラップをやるのだと、ラップをやるしかないのだと、伝わってくる。表紙がエモよりに振ふったデザインだったので、最初新刊棚からすぐに見つけられなかった。
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