マンガ好きが選ぶ読書記録&新刊通知サービス
全3件
秦俊
4.8
このレビューにはネタバレを含みます。
タイトル通り"可愛い"だけじゃないのが、この作品の大きな特徴だろう。そんな可愛いだけじゃない式守さんと付き合っている不幸体質の和泉くん。二人が紡ぐ恋愛模様は、毎話頬の緩みが抑え切れないほど微笑ましいものになっている。ラブコメでは付き合うまでを描く作品が多い中で、式守さんと和泉くんが付き合っている状態で物語が始まる。そのため、付き合いたての初々しさや良いところを見せたい気持ちなど、カップルだからこそ描けるものを読むことができるのである。2巻以降には両方の友だちも出てくることで、子どもの部分の残っている高校生らしい、歳相応な式守さんを見ることができる。夏のレジャーや体育祭では、友情をメインに描かれている部分もあり、二人の取り巻く環境を強く感じられるのだ。個人的には4巻から登場した狼谷の話は非常に感動するものがあった。とても美しい失恋を描くだけでなく、その後の狼谷の心情の移り変わり、周りとの関係性の変化は是非とも読んでもらいたい話である。恋愛だけでなく友情や人と人の関わりが紡がれる様子を丁寧に見ることができる作品であり、こそばゆくなるような青春を味わいたい人は必見の作品ではないだろうか。
可愛いだけじゃない式守さん
レビュー(376)件
完結・全20巻
4.2
いわゆる「怖い話」とは一味違う作品になっているのが、この作品の大きな特徴だろう。まず、主人公・四谷みこが「急に霊的なものが見えるようになってしまった」設定は類を見ない独特なものである。見えてしまったものに対して恐怖こそするものの、悲鳴をあげることなどのリアクションを取るのではなく、無視をして霊に見えてることを気付かれないようにしている。そのため、通常のホラー作品とは違い、突然霊が見えるようになった人の日常を覗き見るような感覚になるのだ。泉先生の高い画力もあり、霊的なもののデザインは非常に恐くなっている。しかしその恐さに対して、無視をし続けるために演技をするみこやその周りのキャラの対応がコメディに描かれており、恐怖よりも面白さが勝ってしまうのである。基本は1話完結だが、ストーリー性が強い話もある。今後、どのような物語が展開されていくのか楽しみになる作品である。
見える子ちゃん
レビュー(362)件
既刊11巻
「社畜」と「家出少女」という、簡単にシリアスにできるものが暗くなりすぎずに描かれている。作品冒頭に出てくる「とかくに人の世界は住みにくい」という言葉から、1巻の中でも暗い展開を期待していた部分があった。しかし、この作品の登場人物、特にナルさんはとにかく前向きに生きていると感じられる。いわゆるブラック気質の会社で働いているナルさんだが、作品の中で愚痴や泣き言を漏らす場面はあるものの、物事を後ろ向きに考えている場面はほとんど見られないのである。この設定の中、シリアスにならず、物語が非常に明るく進んでいるのはその部分が強いのではないだろうか。また、4コマ漫画として、ひとつの4コマでひとつの起承転結ができている。けっしてストーリーとしての流れは壊さず、しかし4コマの中にも小さなストーリーができている。4コマとして非常に完成度が高い作品になっていると、私は感じた。この作品を読むにあたり、是非とも読んでほしい部分が1話目の最後である。コマ割り、演出、吹き出しの使い方…全てにおいて、優れている。また、ナルさんとユキちゃんの生活の不安定さを暗示しているようにも感じられる。この場面でも登場する「とかくに人の世界は住みにくい」という言葉。演出と相まり、この1ページだけで、今の世の中の生きづらさが表れているのではないだろうか。1巻の最後の話は、ナルさんとユキちゃんの行く末がいかに脆く、不安定なものなのかを感じさせる。この話を読んで、続きが気にならない人間は少ないだろう。今後の展開も含めて、非常に楽しみな作品である。
社畜さんと家出少女
レビュー(22)件
完結・全4巻
漫画を探す
話題のニュース