オレンジ さんのレビュー

4

3.0

1巻まで読みました

漫画家・鬼龍駿河(その他の作品:『乙女ループ』『カントリー少女は都会をめざす!?』等)の描く、友人の恋路見守り系エスパー百合漫画。
ーーー【あらすじ】ーーー
百合限定で心の声(百合の波動)を勝手に受信する能力に目覚めたらエスパー少女の銀は、友人の彩里(さいり)と恵夢(めぐむ)が両片思いであることを知ってしまい、百合の波動がもたらす砂糖を吐きそうな甘い空間に日々苦しむことになる。状況打破を目指し、二人をくっつけようとするのだが……。
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仮にAというジャンルがあるとします。そのAというジャンル内の表現の幅が徐々に硬直化し、新鮮な作品が出てこなくなった時。多くの場合、A+BやA×Cのように、既存の他要素を投入することで、異なる視点・価値観を付与し、斬新な設定の構築や閉塞感の打破が見込むことができます。ジャンルミックスはアイデアの源泉ですね。
これに当てはまるのが、近年の百合漫画界隈。ジャンルとしての百合漫画(ガールズラブ)は古くからあるため、段々煮詰まってきている(目新しさがない)状況を打破しようとしているのか、近年は、稀に見る勢いで成長・進化&深化しているジャンルと認識しています(あくまで体感ですが)。
特に、1ジャンルとしての百合漫画だったものが、他ジャンルへと越境又は他ジャンルを取り込むことで様々に細分化され、ゾンビ映画よろしく、ジャンルの坩堝の様相を次第に呈してきています。いいぞもっとやれ!

前置きが長くなりました。
本作は、所謂「百合の間に挟まる男or女」というネットミームをもとにして、「百合の波動を受信したところ、両片思いの友人二人が自分(主人公)を"挟まる女"的ポジションに見ている事が発覚」という、不本意極まりない状況に身を置くことになった主人公が、やたらと甘ったるい二人の百合の波動に辟易し、どうにかくっつけようと悪戦苦闘する、恋のキューピッド役の苦悩を描いたコメディです。
本作が普通の百合漫画の枠から脱する(=独自性を持つ)ためにとったジャンルミックスは、例えば『戦争×サスペンス』や、『ゾンビ×ラブコメ』のように、一大ジャンルをわかりやすく混ぜるような派手なことはありません。むしろ、かなりささやかに"ちょい足し"している程度です。
どんなちょい足しかというと、以下のような点でしょうか。
・百合当事者ではなく友人を主人公としている。
・主人公がエスパーである。
・メタ的視点で百合を評する登場人物を絡める。
・明確にコメディを意識している。
このような要素を交えることで、当事者の恋愛模様とは異なる視点から百合を眺める、観測者としての百合を楽しめるわけです。……それって、百合好きの普段の姿と変わらんか。

なんやかんやと書きましたが、作品全体について簡単にまとめますと、1冊完結のコンパクトな物語の随所に、クスッと笑えるコメディを散りばめた作者のユーモアセンスが楽しめる良作である、ということでしょうか。
向き不向きはありますが、比較的万人にオススメできる軽い口当たりの作品ですので、百合漫画好きの方を筆頭に、ご興味ある方は是非お読みください。

百合に挟まれて、エスパー!

レビュー(3)件

完結・全1巻

4.5

3巻まで読みました

漫画家・内藤泰弘(その他の作品:『血界戦線』『S.Flight』『サムライスピリッツ』)の代表作。
自らに"不殺の誓い"を課す男ヴァッシュ・ザ・スタンピードの旅路を描いた、傑作SFガンアクション西部劇(サイバーウエスタン)。
こちらは、月刊少年キャプテンにて連載され、キャプテン廃刊に伴い徳間書店から出版された全3巻版(以下「無印」)。
現在は少年画報社から出版されている全2巻版での販売となっています。中古市場流通が大半ですので、徳間書店版を入手希望の方はお間違えなきよう。

『DUNE』等のハードSFの影響を強く受けた世界観に、アメコミ・ガンアクション・西部劇・ロードムービー等の要素を織り込んだ本作。「その身に背負う十字架の重みに苦しみながら、人々を救わんと奔走する」という普遍的英雄性を持つ主人公は、神聖さを有するがために、小難しい・共感しにくい・親しみにくい、となってしまいがち。さながら『マッドマックス』の主人公マックスの如し。
ですが、抱えた苦悩を表に出さず飄々と生きる、ヴァッシュのコミカルな態度によって、非常にカジュアルに読み進められてしまうのが巧みなところ。キャラクター設定の妙ですね。
とはいえカジュアルでフレンドシップ溢れる愛の物語なのは最初の方だけ。ヴァッシュの兄ナイブズの配下レガート率いる、12人の刺客GUNG-HO-GUN登場の13話以降は、シリアスパート比率が急激に高まります。

上述のように、『トライガン』は元々徳間書店の月刊少年キャプテンにて連載されていたものの、突然の廃刊(97年1月)に伴い少年画報社のヤングキングアワーズに移籍。無印から2年が経過したという設定のもと、『トライガン・マキシマム』(以下「マキシマム」)として連載が再開(97年10月)されます。
そのため、無印の立ち位置は、壮大な世界観の風呂敷を広げた段階、要するにまだ序章なわけです。
謎に包まれたヴァッシュの過去や、人々が生命を拒む砂漠の星で必死に生きねばならない理由は、マキシマムにて解き明かされます。
勿論、盟友ニコラス・D・ウルフウッドとの共闘の日々と感涙の別れ、レガートとの究極の戦い、そして兄ナイブズとの因縁への決着等も、マキシマムを読んでのお楽しみ。

星雲賞受賞の巨編の幕は、まさにここから始まった!
SF好きには文句なくオススメの漫画ですので、まだ未読の方は、是非お読みください!

TRIGUN

レビュー(30)件

既刊3巻

3.0

3巻まで読みました

漫画家・飛田漱が描く、ご町内のおじさん方と女子大生が織りなす日常系コメディである『ミスターズ ~私の町のおじさんたち~』は、緩い空気感が心地いい馴染みやすさを与えてくれる、ヒーリング漫画です。
全3巻という巻数の少なさ、起伏の少ない物語、適度に抜け感ある絵柄、いずれの要素も読みやすさに貢献しています。
市井の人々の何気ない日々が紡ぐ物語を、抜粋するかのような日常系漫画がお好きな方は、本作もお好みに当てはまるのではと思料します。

平均年齢50代のおじさん達は曲者揃い……という程変なキャラではなく、「こういうおじさんいるなぁ」という性質をデフォルメして付与したような存在です。
各人仲良しではあるものの、当然ながら異なる人生を歩んでいるおじさん達。それは、独身だったり妻子(孫)がいたりといった所からも窺い知れるところ。
物語の中だけでは描ききれない、それぞれの人生が存在していることを想起させます。

やりたいことも夢もない主人公の女子大生・井ノ山春(通称はるちゃん)が抱える静かな悩みは、多くの"普通の"人々にとっては共感できるものであり、私もその一人です。そんな彼女に対し、導く者・老賢者ポジションのおじさん達が人生のアレコレを押し付けがましくなくそっと伝えてくれる様は、思わず「自分にもこんな関係性の年長者がいたらなぁ」とないものねだりしてしまいそうになります。
尤も、おじさん達の中には「若かりし頃は同じくそんなものだった」ということを匂わせてくる人もいますが、どちらかと言うと昔から"確たる自分"という個性を(家庭環境等も要因としています)有する人が多く、参考になるようでならないところもまた、ある意味リアルです。

なんやかんや我が道を行っているおじさん達と、彼らに少しずつ影響されていく主人公の、緩やかな日常の一コマ、是非覗いてみてはいかがでしょうか。

ミスターズ~私の町のおじさんたち~

レビュー(5)件

既刊3巻

4.0

漫画家・内藤泰弘(その他の作品:『血界戦線』『S.Flight』『サムライスピリッツ』)の傑作SFアクション漫画『TRIGUN』シリーズの公式アンソロジーコミック。
内藤泰弘先生の読切作品『劇場版TRIGUN〜Badlands Rumble〜番外編 ドドンゴ兄弟ハニーカムドビレッジの決闘』前後編が掲載されており、Boichi先生、水上悟志先生、Ark Performance先生方、高内優向先生、竹山祐右先生、相模映先生が作品を寄稿。
その他、荒川弘、虚淵玄、高河ゆん、武内崇、寺田克也、奈須きのこ、日本橋ヨヲコ、藤島康介、森山大輔、和月伸宏(いずれも敬称略)等、豪華著名人の劇場版応援コメント&イラストが見れる貴重な一冊となっています。
カバー裏は相変わらず気の抜けたぶっ飛び絵ですし、『TRIGUN』シリーズファンの方なら満足いただけること間違いなし。
個人的にはArk Performance先生の『les enfants(レ ゾンフォン)』(childrenのフランス語)がお気に入りです。『TRIGUN MAXIMUM』以降のストーリーを、特徴的な絵本的デフォルメを施した絵柄とおとぎ話風な語り口調に変換して展開。後半で実は子どもに本を読み聞かせていたとわかりますが、それを読む人物が誰なのかは……本書を読んでのお楽しみ。

トライガン・マルチプルバレッツ

レビュー(2)件

既刊1巻

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