十日草輔

穏やかでストレートな少年漫画的ストーリーかと思いきや、凄惨な過去やショッキングなシーンが間に挟まれ、非常に心を抉る作品です。
決してそれらはグロテスクではないものの痛々しく描かれ、絵柄とのギャップのせいか、登場人物たちの行動や、背景をより印象深いものにしている…
しかしそれでいて完全大人向けというわけではなく、王道で素直に心をアツくする展開も多く、誰が読んでも感動させられます。
そして凄いのが、以上の表現が少なめの文字量と簡素かつ魅力的なイラストで完成されている点。
耳の聞こえない主人公ということでセリフがほぼ使えないのにも関わらず、秀逸なサイレント作品さながらに心情や思考がダイレクトに伝わるのはこの高い演出力によるものだと思います。
無駄な部分や雑な展開は多少なりともあるものの、むしろそれらもこの作品の味になっていて、この独自の童話的空気やファンタジーの世界を作り出す要因ではないかと
そしてこの作品の特に魅力的な部分はやはりキャラクターの愛くるしさだと思います。
メインキャラの挙動のキュートさはもちろん、序盤嫌味な役割として登場したキャラクター達も愛着が湧いてしまう展開が待っており、良い意味で憎い漫画です。
そしてこの漫画、未だ判明してない謎や思惑、さらに物語が発展しそうな設定が残っているので、楽しみがまだまだあります