山口貴由さんの作品の書影

山口貴由

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455

4.7

15巻まで読みました

南條範夫原作の時代小説『駿河城御前試合』を原作とした時代劇漫画。
作者は"覚悟のススメ"などを描いた山口貴由氏で、氏の作品らしい、鍛え抜かれた肉体、個性豊かすぎるキャラクターと、内臓飛び散らせながら絶命する壮絶な描写が特徴的な作品です。

原作があり、『駿河城御前試合』内の一作『無明逆流れ』が中心となったコミカライズです。
ただ、原作も読了済みですが、マンガは原作をほとんどとどめておらず、アレンジが加えられた別作品と見て良いと思います。

寛永6年9月24日、駿府城内で行われた御前試合に至るまでのエピソードとなっています。
その御前試合は、通常木剣を用いるところ、駿府城大納言の徳川忠長の命により真剣が用いられていました。
第一試合として現れたのは、隻腕の剣士「藤木源之助」、そして他方は、盲目の「伊良子清玄」でした。
到底まともな試合が望めそうにないと周囲は訝しんでいましたが、盲目の清玄は大地に剣を突き立て、その剣を割れた足の間に挟むという奇妙な構えを取り、対する源之助も、刀を大きく構えます。

そして次のシーンからはその7年前に遡ります。
掛川で剣豪「岩本虎眼」が開いた道場に道場破りとして現れた清玄は、源之助を破るも、師範の「牛股権左衛門」に追い詰められ、虎眼流への入門を希望する。
メキメキと力をつけ虎眼流の後継者として目されるまでになった清玄が、盲目となり、虎眼流から放り出された経緯、隻腕となった源之助と、御前にて決着をつけるに至った経緯が述べられます。
時代劇で、舞台となる駿府城も、駿府城城主・徳川忠長も実在しましたが、読む上で歴史を知っておく必要はないです。
ストーリー展開はわかりやすくてテンポも良く読みやすいです。

罪のない人が無慈悲に殺されたり、犯されたりするシーンも多く、世界観は非常にバイオレンスです。
腸から溢れる内蔵や剥かれる肌、断面から覗く大脳のグロテスクな描写があり、読む上である程度の耐性は必要と思います。
一手違えば、うっかりとしたことをすれば、即時命を失うような緊迫した状況下が伝わってくる作品で、緊迫感があり夢中でページを進めました。
また、作中の雰囲気は緊迫しているのですが、ネタとして語られるシーンも多くあります。
舟木道場の兵馬数馬が、同時に達した時の「ぬふぅ」という掛け声や、弟弟子である涼之介を想って妄想にふける山崎九郎右衛門、通称「チュパえもん」などは有名ですね。
ギャグなのか否か判断に困るシュールなシーンが随所にあって、知っていても知らなくても楽しめると思います。

ただ、ラストは判断に困りました。
ここまで来たら大団円でも良さそうなものですが、"なぜ"という気持ちしかなかったです。
安易に丸く収めるには血が流れすぎている気がするので、悲惨ですがどこか仕方ないという気持ちにもさせてくれる終わり方でした。

シグルイ

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3.0

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