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『梶原一騎伝』の書影

梶原一騎伝

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発刊: ~

既刊1巻

   わけても昭和30~40年代に青春を過ごした人たちの脳裏に、梶原一騎という名前は永遠に刻印されているに違いない。『巨人の星』『あしたのジョー』『タイガーマスク』『夕やけ番長』『愛と誠』と聞けば、胸熱くした日々がありありとよみがえるだろう。本書は、日本中に「スポ根」ブームを巻き起こした漫画原作者梶原一騎こと高森朝樹の実像に肉迫した評伝の文庫化である。 <p>   親の手に余り、教護院送りとなった少年は、激情家でありながら、同時に純文学作家を目指すロマンチストでもあった。やがて弱冠17歳にしてフリーライターとなると、その後川崎のぼる、ちばてつや、辻なおきら漫画家たちと才能をぶつけ合う。あるいは極真空手の大山倍達、プロレスラー力道山らとも広く交流した。すでに伝説と化している梶原の生い立ちやその仕事ぶりについて、著者は多くの証言を得るべく東奔西走しつつも、丁寧かつ冷静にその足跡をたどっている。 <p>   そして、梶原を語るには避けて通れない、数々の事件やスキャンダルについても、著者は終始その姿勢を崩さない。暴力団とのかかわり、編集者へのたび重なる暴行、天井知らずの浪費、女性問題。作者は努めてニュートラルな視点で、それらの真相を追いかけている。 <p>   その目的は、事件を暴くことでも、物事の是非を明らかにすることでもない。その時々の梶原のこころの動きを察し、その震えを感じ取ることである。なぜなら、梶原一騎という存在自体が、すでに事件そのものだったからである。(文月 達)

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