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 「文藝」2001年夏号の岡崎京子特集の増補版。編集部曰く、岡崎京子の「言葉」にスポットを当て、彼女のアナザー・サイドを浮き彫りにしようという試み。 <p>   冒頭には単行本未収録の短編漫画が2編収録されており、うち1編は初出不明の発掘もの。この時点でコアな岡崎京子ファンには買い、と言えるが、ほかにも岡崎京子のインタビューやテクストが多数再録されていて魅力的。美しく詩的な文章から、スッパリとした受け答えのインタビューまで、幅広く岡崎京子の言葉をたのしめる。漫画とセットになった対談「女のケモノ道」の、肩の力がぬけた中に鋭い視点が見え隠れするおもしろさなどは、実に岡崎京子らしい。 <p>   また、岡崎京子とその作品について、吉本ばなな、宮台真司、椹木野衣が、それぞれインタビューに答える、という企画も本特集の1つの柱になっている。それはもうたくさんのキーワードが次々と飛び交う3者の岡崎論。彼らの言葉の奥に、さまざまな観点から読み解くことができる岡崎作品の、重層的な魅力が浮かび上がっている。「同時代的な作家」とよく言われる岡崎京子だが、実はそれだけではなく違う時代や環境の中で生活していた人間にとっても普遍的に刺激的な存在であることを、改めて感じさせてくれる。 <p>   岡崎京子の漫画に触れ、なんらかの強い印象を受けたことのある人にはおすすめできる1冊。そして、読んだことのない人も、さまざまな書き手の思い入れたっぷりの文章や対談を読めば、きっと岡崎作品を手にとってみたくなるはず。(横山雅啓)

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