時は昭和中期。田舎から、東京郊外の本屋の旦那様の所に嫁いできた“奥さん"。 しかし旦那さんはすぐに亡くなり、奥さんは本屋を一人で切り盛りすることに。 商店街の人々をまきこみながら、独自の書店商売を繰り広げる奥さんの「恋物語」。
終戦から10云年後、東京にある一軒の小さな本屋さんのはなし。 主人公はその本屋さんに、半ば口減らしのような形で田舎から嫁いできた、何も知らない奥さんです。 ただし、物語スタート時点ですでに旦那さんは他界しており、未亡人となっています。 辛うじて読み書きはできるが、仕入れや販売は疎か、米の炊き方も知らない奥さんはお向かいの八百屋の長男に本を読み、自分で生きるための努力をしろと叱られます。 何も知らない奥さんは本を読み、様々なことを学んで、死んでしまった旦那さんに近づくため"本屋"となる決心をするというお話。 高橋しんさんは"最終兵器彼女"以降、世界系SF作品が中心だったのですが、本作は終戦後の東京という舞台で、潰れかけた本屋が息を吹き返すという話なので、氏の作品としては珍しいといえます。 氏のデビュー作の"いいひと"に近いものを感じました。 普通に考えてありえない手法で成功を得るのも"いいひと"の高橋しんらしいです。 ただ、本作は一冊で完結しており(関連の短編集がありますが)、駆け足な内容になっているため、成功もトントン拍子で、色々唐突な印象を受けました。 できれば同じ内容を4,5冊かけてじっくり読みたかったかなと思います。 特にどんでん返しや伏線はないのですが、ほっこりと感動できる名作です。
by うにたべたい (528)「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。」の番外編です。 設定は変わらず、一話完結の短編が4作入っています。 本編側で結構、時代設定がおかしなことになっていましたが、本作は完全に近代である描写が目立ちます。 もはや、戦後日本ではないパラレルワールドとして読んだほうがいいかと。 時代考証についてはもう少し、リアルに描いてほしかったかなと思います。 内容、雰囲気は前作踏襲、というかいつもの高橋しん先生の感じです。 本作で特にストーリーに進展があるわけでもなく、展開があるわけでも伏線回収があるわけでもありません。 本編側の内容が気に入った人に向けてどうぞという内容です。 肩肘張らずになんとなく本を楽しみたい方におすすめです。
by うにたべたい (528)