きゃないん さんのレビュー

3

5.0

2巻まで読みました

いのりのリンクに賭ける執念は。
ひたむきな想いは。
夢を追いかけている人。
夢を諦めた人。
夢を探している人 。
いずれにもド直球で響きます。
その熱に司は突き動かされ、その涙に僕の心は大きく揺さぶられました。

いのりにとってスケートは存在証明であり、自己表現であり、人生を懸けた夢でもある。
その熱量と情熱は読者を傍観者のままでいることを許さない。
いてもたってもいられなくなるんです。
僕は正直悔しいとさえ思いました。

彼女の夢に懸ける覚悟を前に、自分の覚悟の、想いの薄っぺらさを思い知りました。
僕は何をやっているんだと自分に対する怒りすら湧いてきましたよ。
対抗心をメラメラ燃やし、負けたくないと、真剣にそう思いました。

悔しいのは夢の残り火がまだ心の中に残っている証拠。
あの涙に、あの笑顔に、まんまと焚き付けられました。
諦めるのはまだ早い。
僕はまだリンクに傷跡すら残していないぞ。
内から沸き上がる衝動と情動を抑え切れません。

こんな気持ちがまだ自分に残っているだなんて夢にも思いませんでした。
この興奮と感動と高揚感をぜひ皆さんと共有、共鳴、共感、共体験したい。
この作品は本物です。
ガチのマジで令和一お薦めの作品です!

オオおおお!

メダリスト

レビュー(321)件

既刊8巻

5.0

3巻まで読みました

このレビューにはネタバレを含みます。

【見える子ちゃん】

何が怖いってまず自分だけが見えてしまうこと。
自分の頭がおかしいんじゃないかって思うよね?
世界から自分だけが爪弾きにされた気持ちにもなるかもしれないし、そもそも生理的に無理。
造形から有り様から本当に怖いのよ。

加えて余りにも見えすぎてしまうが故に時に化物と人の判別が難しいこともあり、更には見えないフリをするがために化物や憑いているモノの性質が全く分からないこと。
見えているのに分からない。
それが本当に恐ろしい。

これは見えるヒロインみこが化物と向き合い対峙しあまつさえ成仏させてしまうような物語ではなく、あくまで見えるだけの普通の女子高生が恐怖におののきながらもひたすらに化物の存在をシカトしやり過ごすだけの物語。

だったのよ。
少なくとも2巻までは。

何が面白いって例えば化物をいかにシカトしてやり過ごすかとか女子高生が考えられる範囲でお払い的なことを試みるとか、勿論その辺はこの作品の肝でもあるので有り体に言ってもすっごく面白いんだけど、三者三様の見える子見えない子が揃ってからが本番というか、本当に加速度的に面白さを増していくのよ。

見える子見えない子の対比、そのおかしみだったり悲喜劇だったり、そこに中途半端に見える子が加わることによる誤解やすれ違い、危険性の増幅だったり、友情だったり。

善が臨時教諭として赴任して来た辺りを潮目に物語に大きなうねりというか潮流のようなものが生まれ、ただ見えるだけであったみこに化物と向き合う意志、覚悟のようなものが芽生え始める。

ここまででも背筋がゾクゾクするほど面白かったのに、ここから更に面白くなっていく予感がプンプン漂ってきちょりますよ。
示唆深い話やホロリとさせられる話もあったり、本当に懐の深い作品です。
今が読み頃。
ぜひ一読あれ!






名作

見える子ちゃん

レビュー(354)件

既刊9巻

5.0

2巻まで読みました

このレビューにはネタバレを含みます。

仕事に家庭と問題続きでいっぱいいっぱいで吐き気を催すほど本当に心が弱っているときに優しくされたら・・・それが娘の友達とか関係なく思わず寄っかかってしまいそうになる気持ち、誰だって理解できるはず。

頑張りを誰も認めてくれない中で娘の友達古都に「よく頑張りましたね」と頭をいいこいいこされて、「疲れませんか?」と、「今日だけは『係長』も『お父さん』もおやすみして『晃介さん』になってみませんか?」と、「全部受け止めますから・・・」と言われた日にゃあ、たとえこれが悪魔のささやきであったとしてもよろめかずにいられましょうか?

「逃げ出したい」そんな言葉すら「おいで」と受け止めてくれて・・・。
束の間の逃避行。
初めてのキス。

でも本当に逃げ出したかったのは、いっぱいいっぱいの自分を受け止めてほしかったのは、もしかしたら古都の方だった・・・?

そんな古都サイドの事情が分かってくるのが2巻から。

古都の家庭に父親の影が見えないことから、晃介を慕う気持ちは果たして純情なのか、それとも父親を慕うような思慕の念なのかいまだに判断がつかないけど、彼女が母親に無理やり被せられた「良い子」の仮面を剥ぎたがっているのは、彼女自身が追い詰められ、助けを求めているように見えるのは気のせいでも勘違いでもないはず。

受け止められているようで受け止めていて、依存しているようで依存され、どちらがどちらに寄っかかっているのかよく分からなくなってくる中、古都の想いはますます募り、晃介に重くのしかかっていく。

そこに引き籠りだった美也の復学も合わさり、美也を通して繋がっていたはずの2人の関係がより複雑に絡み合っていく。

考察混じりの大まかなあらすじです。

晃介の仕事と家庭に追い詰められていく心理描写がえぐいほどに細やかで、そこにそっと寄り添うように入り込んできた古都の存在は男目線で言うと一言で小悪魔かと。
ただし古都は古都で問題を抱えているので、今後この2人が純粋な恋愛関係に発展するのか、はたまた周囲に理解を得られず心中コースまっしぐらなのか、それとも共依存のような明確に形を成さない関係に陥るのか、不穏な空気にハラハラドキドキ片時も目が離せません。
他人事でないのは晃介の気持ちが痛いほど理解できてしまうから・・・なのかもしれません。

名作の気配

娘の友達

レビュー(328)件

完結・全7巻

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