夕凪の街桜の国

こうの史代

3.59

1749

発刊:2004.10.12 〜

既刊2巻

『夕凪の街桜の国(1)』巻の書影
『夕凪の街桜の国(1)』巻の書影
うにたべたいさん、他2人が読んでいます

この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
3.59

42件の評価

4.6

2巻まで読みました

こうの史代さんの作品。
「この世界の片隅に」と同じく、原爆をテーマにしたマンガですが、本作は戦時中を描いたものではなく、原爆投下後の広島で生きる人々の生活を描いたものとなっています。
「この世界の片隅に」より前に描かれていて、「この世界の片隅に」は本作に続く形で描かれたものとなります。

"夕凪の街"、"桜の国(一)"、"桜の国(二)"の三作が収録されていて、それぞれ原爆投下から約10年後(1995年)、40年後(1987年)、60年後(2004年)が舞台となっています。

"夕凪の街"は、原爆被害にあったが生き延びた女性「平野皆実」が主人公です。
建築事務所に就職し、倹約をしながら慎ましく平穏に生きるが、原爆の話題にできるだけ触れないようにする人々の姿に違和感を感じる。
ある日、同僚より求婚されるが、原爆投下のあったあの日、たくさんの死体を踏み越えてきた自分が幸せになるわけにはいかないと感じる、という展開です。
原爆症に苦しむ女性の姿が描かれていて、最後はとても悲しい終わり方になっています。

"桜の国(一)"は平野皆実の弟「旭」の娘「石川七波」に主人公が変わります。
場面は変わりますが、時間軸は連続していて、"夕凪の街"に出てきた皆実の母と同一人物らしき女性が皆実の祖母として登場します。
七波が鼻血を出したことで過去のトラウマが想起させられ、つらい気持ちになるなどの描写がリアルで痛々しかったです。
"桜の国(二)"も引き続き七波が主人公で、戦争からはかなり時間が経過しているのですが、原爆二世となる七波の弟に、先天性の可能性が疑われる喘息症状があることで"今"の我々にも関係がないわけではないということが描かれており、あの出来事は確かにあり、その事実は消えてなくなることはないのだと感じられました。
ただ、最後は、それを受け入れて生きる姿が描かれていて、過去に引きずられるわけではなく、未来に目を向ける内容となっています。
原爆をテーマにしているのですが、悲惨さや残酷さとは違う点にスポットがあっていて、前向きな内容と思いました。
素晴らしい作品だと思います。

1

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