この漫画のレビュー

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1.0
3.50

81件の評価

4.6

10巻まで読みました

「越後の龍」と称され、越後国を統一し安寧を齎し、「甲斐の虎」と称される武田信玄と川中島の戦いを行ったことで知られる、軍神・上杉謙信。
髭面の強面で頭巾が特徴のこの偉丈夫には、実は女性説があります。
小説家の八切止夫氏が、トレドの修道院で発見した日本についての報告書内に、"上杉景勝の叔母"という言葉を見つけたのがきっかけです。
死因が、婦人病を示す"大虫"であること、謙信のことを「男もおよばぬ大力無双」と歌った瞽女歌が発見されたこと、性格、風貌が女性的であったこと、生涯独身で子供がいないことなどが根拠としており、極めつけとして、林泉寺に残された、生前描かれた謙信の肖像画を見ると、そこには全くイメージの異なる、女性的な風貌の人物が残されているというものです。
ただ、その根拠となった資料、例えば"トレドの修道院の報告書"や"瞽女歌"は、存在をそもそも確認されておらず、大虫=婦人病というわけでもないです。
そのため、女性説自体が研究の甘さから歴史研究家からは批判されていて、女性説はトンデモ説の一つであることを念頭に置く必要があります。

本作は、『上杉謙信がもし女性だったら』というIFのストーリーとなっています。
上記の謙信女性説が題材として用いられていて、読むと本当に上杉謙信は女性だったのかもしれないと思わせられる内容でした。
ただ、確かに月に一度戦を中断していたり、妻を娶らなかったり、上杉謙信については女性であればしっくりくるエピソードもあるので、そういう意味でかなり説得力のある作品だと思います。

上杉謙信幼少期から始まり、その生涯が描かれています。
体が弱い晴景の代わりに跡継ぎとして男子を切望していた長尾為景は、妻の夢枕に毘沙門天が立ったことで、立派な男子が期待されていた。
だが、生まれたのは女子であった。
一度は気落ちしていた為景だったが、その子を男子として育て、将来は姫武将とすべく、幼名:虎千代と名付けて育てる決心をします。
謙信が女性として生まれたところ以外は史実に基づいていて、歴史オンチの私にもわかりやすくかったです。
また、筆者は『海月姫』や『東京タラレバ娘』の東村アキコで、ギャグパートも多くとても読みやすかった。
歴史オンチ向けには「アキコのティータイム」というショートカットが設けられていて、ダイエットティー飲みながらパンを食べるアキコと難しいところを雑に飛ばすこともできます。

基本的には史実に基づきますが、実在が怪しまれる鬼小島弥太郎や、武田信玄が「気弱な優男」であった説を採用するなど、全くカチカチの歴史マンガというわけでもないです。
ただ、"敵に塩を送る"という逸話もあり、武田信玄とは友情があったのではないかという説はあります。
全くのファンタジーというわけでもなく、謙信に関するいろいろな逸話が矛盾なく盛り込まれていて、面白い歴史ドラマでした。
歴史が苦手な方、逆に歴史好きな方にもおすすめです。

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