25時のバカンス

市川春子

4.04

6083

発刊:2011.09.23 〜

既刊1巻

『25時のバカンス(1)』巻の書影
ぽんぽんさん、他2人が読んでいます

この漫画のレビュー

5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
4.04

135件の評価

4.0

1巻まで読みました

このレビューにはネタバレを含みます。

この作者の真骨頂である人外や異形の生物となっているという登場人物のストーリーであるが、やはりその姿が、決してグロテスクではない、しかしどこか恐ろしさと愛らしさを持った形となっているのは純粋に惹かれるモノがあり、普段の美しく簡素な絵柄とのギャップで物語に強く引き込まれる。
この作者の他の作品でもそうだが、展開の突飛さが魅力でありながら、そこが話の本質というわけではなく、あくまでそれらの設定のもと繰り広げられるキャラクターたちのドラマが作品のキモとなっていると感じる。
実際その設定がしっかり活きる練られたストーリーや登場人物たちの心理描写の発想は本当に素晴らしい
そしてこのアーティスティックな絵柄でありながらちょっとした科学要素や会話のユーモアが盛り込まれているため美しくありながら読みやすい漫画となっているのも圧巻と言える。

25時のバカンス
このエピソードはほんの少しの研究者の狂気と、歪んだ姉弟関係が描かれ、それらが深夜の黒染めの海という背景と相まって切なさを増して表現されている。
そして話全体の雰囲気の良さも好みだが、何よりオチというか終盤のまとめが特に綺麗で、不器用でクセのある表される、しかしそれ自体は素直な愛情が、派手さはないままサラサラと描かれてくのが粋で好き。

パンドラにて
この作者の理系チックな人々や設定を文学風な空気感でエンタメ作品に落とし込むのは類を見ない才能だと思う。
完全なSFというわけではないとは思うが、幻想的過ぎる御伽噺とは違う、硬質さを持ったファンタジーの世界観がクセになる。
そして、ユートピア的?な舞台で現代日本のようなネーミングと学校という封鎖コミュニティがあるようなこの不一致感もまたクセになる要素のひとつ。
また、白黒の漫画における巧い演出が多々見られ、コマの展開の仕方や、トーンとベタの使い方に感心してしまう
しかし何よりもこの結末の二転三転が想像を超えるもので、最終的に明かされるエモーショナルな真実のさらに奥に存在する真実にはさすがに正直理解は仕切れていない気はするけど、驚愕と余韻が入り混じって不思議な感動が

月の葬式
三作続けてリアリティのない、しかし情動的な絆や不思議な愛情が描かれている。
相変わらず話の急な展開(というか急な設定の開示)のタイミングが絶妙で、そこから悲しみを帯びつつも穏やかな結末に向かっていくのは本当に凄い。
この短編ではテーマが月ということが十二分に魅力的に作用していて、ラストの見開きの結晶のような月の光の一枚絵は絶対に誰しもが魅了されるシーンとなっている。
ストーリー部分もアート部分もどちらも強力なものなのに両立している、むしろ強調し合っているこの完成度は脱帽としか言いようがない。

12

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